【DiSC®事例】中堅看護師のリーダーシップ開発にDiSC®の理解を必須条件にしてきた20年間の積み重ね
聖マリアンナ医科大学病院看護部師長
吉岡千恵子氏
聖マリアンナ医科大学病院看護部師長
吉岡千恵子氏
中堅看護師のリーダーシップを育成する
聖マリアンナ医科大学病院の看護部では、この20年間にわたってDiSCを中堅看護師の研修アセスメントとして使用してきた。同院には人材研修の運営、評価、次年度の企画などに携わる委員会が設置されており、吉岡氏は看護師長として委員会に所属し、研修を推進、フォローされている。
「当院では『生命の尊厳』を理念に『質の高い看護ケアを提供する』ことを使命と考えています。そのためには質の高い人材を育成する必要があり、チーム力を発揮できる組織作りがポイントになると思っています」
聖マリアンナ医科大学病院の看護部には「エキスパートⅠ」という研修があり、参加人数は年間を通じて50名、臨床経験3年以上、同院在籍1年以上などが参加資格となっている。
「研修が中堅看護師を対象としているため、リーダーシップは重要なテーマとなっています。研修の目的は『集団の中で自己のあり方を学び、リーダーシップを発揮する』ことで、研修の目標も『リーダーシップを発揮する上での自己の課題を明確にして課題を解決する』『他のメンバーを巻き込んで組織目標を管理する』としており、いかにリーダーを育成していくかにウェイトが置かれています」
こうした目的、目標を達成するために、5月からオリエンテーションがスタート、6月にDiSCを実施し、7月にHRD社から講師を招いて「リーダーシップ 効果性の8要素」の講義と演習を実施する。その後、8~ 10月にかけて「実践と振り返り」の時間を設け、研修生への継続的なサポートを2週ごとに5回、グループワークによって行っている。
10月以降は、研修で身につけたリーダーシップを各個人が実践し、翌年2月の「成果発表会」によってその評価が行われる。
DiSCを共通言語とする組織風土が構築されてきた
このような研修の内容について、吉岡氏はさらに詳細に説明してくれた。
「最初のオリエンテーションでは面接を行って、各自が考えるリーダー像を明らかにしてもらった上で、その年のアクションプランを確認していきます。このアクションプランは、後からの振り返りの際に実際にその目標を達成できたかどうか、評価の対象となってきます」
次に吉岡氏は研修にDiSCを導入する意味について、中堅看護師が抱えている人間関係の悩みへのソリューションだと語ってくれた。
「リーダーシップを発揮するにあたっての中堅看護師の共通の課題は、『メンバーへの指示が伝わらない』『若い子の考え方がわからない』など対人関係の悩みです。DiSCを学ぶことによって自己と他者を知り、欲求の違いを理解して関わり方の選択肢を見出し、看護師同士の関係性を強くすることができます。そして病棟スタッフ同士のコミュニケーションが深まることによって、より質の高い看護を提供することにつながっていきます」
DiSCの理解が進んだ後に「リーダーシップ 効果性の8要素」の講義と演習が1日かけて実施され、さらにその後「実践と振り返り」が行われる。
「それまでの研修で学んだことを、アクションプランの実現に活かすべく、2週間ごとにグループワークを開催します。4~5名のグループに対し1名の研修委員がファシリテーターとして担当し、メンバー同士で自分が立てたアクションプランを実践できているかを検証しています。その際に『効果性の8要素』の『明確なビジョン『』責任『』パートナーシップ』などの項目について評価していきますが、自己評価に留めず、グループのほかのメンバーからの評価についても師長に報告が上がります。そうした評価をもとに次の2週間どんなことを実践したいのか、アクションプランが提示されることになります」
最後にDiSCを活用した研修を20年間積み重ねてきたことの意味について、「私たち自身も『DiSC』や『効果性の8要素』という言葉が当たり前になってきていると実感できます。研修に参加するメンバーの動機も、リーダーシップ発揮の課題を認識し『先輩に勧められ自主的に』『DiSCに興味があった』などと、積極的な参加理由も増えてきています。院内全てではありませんが、看護部内ではDiSCは共通言語として定着してきており、DiSCの行動特性を職場での学習に活用する組織風土に近づいているのではないかと感じています」と、吉岡氏はその現状を語ってくれた。
2019年03月12日