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「ザ・ベスト リージョナルバンク」の実現に向けた事業進化の轍~経営環境の変化をチャンスとする組織・人事戦略~『HRD Next 2021-2022 PROGRAM3 Day1_Session1』

経営環境の変化をチャンスとする
組織・人事戦略

「ザ・ベスト リージョナルバンク」の実現に向けた事業進化の轍~経営環境の変化をチャンスとする組織・人事戦略~

ゲストスピーカー:
株式会社ふくおかフィナンシャルグループ取締役執行役員
株式会社福岡銀行取締役専務執行役員
五島 久 氏

モデレーター:
HRDグループ・プロファイルズ株式会社
ディレクター パフォーマンスコンサルタント
水谷 壽芳

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「ザ・ベスト リージョナルバンク」の実現に向けた事業進化の轍~経営環境の変化をチャンスとする組織・人事戦略~『HRD Next 2021-2022 PROGRAM3 Day1_Session1』

株式会社ふくおかフィナンシャルグループ取締役執行役員
株式会社福岡銀行取締役専務執行役員
五島 久 氏
Goto Hisashi

1985年、九州大学・法学部を卒業後、㈱福岡銀行へ入行。
人事部・副部長、総合企画部・部長、営業推進部長などを経て、2017年に同行の常務執行役員並びに㈱ふくおかフィナンシャルグループ・執行役員に着任後、現職に至る。

事業基盤である九州の持続可能な発展に貢献するとともに、すべてのステークホルダーから支持される「ザ・ベスト リージョナルバンク」の実現を目指している、ふくおかフィナンシャルグループ(FFG)。4銀行のグループ統合やデジタル技術を駆使した事業の高度化などを実現しています。中でも、日本初のデジタルバンク「みんなの銀行」の設立や、“人生100年時代”に合わせた金融サービス「投信のパレット」など、先進的なサービスは従来の金融サービスと一線を画しています。今回のセッションでは、こうしたグループ統合や新サービス誕生秘話、そしてその背景にある失敗を恐れない企業風土の形成や人事施策などについて、同社取締役として事業成長を牽引し、2022年4月1日にFFGおよび福岡銀行のトップに就任される五島久氏にお話を伺いました。

セッション動画はこちら

「シングルプラットフォーム・マルチブランド」の経営スタイル

まず、水谷は五島氏にFFGが2007年の設立以来築いている独自の経営スタイルについて尋ねました。五島氏は、まずFFGの沿革を説明。2007年4月に福岡銀行(創業1877年)と熊本銀行(創業1929年)の統合に始まり、同年10月に長崎の親和銀行(創業1879年)を経営統合。2016年4月にデジタルを活用した様々なサービスを提供する「iBank」事業をスタート。2019年4月には長崎の十八銀行を経営統合し、2020年4月に十八銀行と親和銀行が合併し十八親和銀行が誕生。2021年5月に「みんなの銀行」サービスを開始。こうしてFFGは現在、4つの銀行を傘下に置いています。「設立から14年が経過し、経営は少しずつ進化しています」と五島氏は話しました。

次に五島氏はそのFFGの経営スタイルを説明。グループ経営理念「高い感受性と失敗を恐れない行動力を持ち、未来志向で高品質を追求し、人々の最良な選択を後押しする」や、コアバリュー「いちばん身近な銀行/いちばん頼れる銀行/いちばん先を行く銀行」などの下、福岡銀行、熊本銀行、十八親和銀行の3行を顧客接点としつつ、FFGが一つのプラットフォームで商品・サービスを提供する「シングルプラットフォーム・マルチブランド」という経営スタイルを取っています。「マルチブランド」は、地方銀行としてそれぞれの地域社会や地域の顧客との関係性を重視し、地域に密着して営業を展開する姿勢を示しています。一方、グループ経営をより効率的・効果的に進めるため、各行のシステムや事務などのインフラを共通化するとともに、企画機能をも一体化させる「シングルプラットフォーム」を構築。

「足腰は一つ、上半身は各地域で活動するといった経営スタイル」と五島氏は説明しました。

これを受け、水谷は「地域とのエンゲージメントを維持しつつ、スケールメリットを出す秀逸な経営モデル。これを実現させていくところにFFGならではの強みがあると思います」と述べ、これを支える要素について五島氏に尋ねました。

ふくおかフィナンシャルグループの経営スタイル(出典:ふくおかフィナンシャルグループ)
(出典:ふくおかフィナンシャルグループ)

「失敗を恐れない」といった組織文化と新サービス

五島氏は、「各行がオリジナリティは持ちつつ、インフラはあたかも一つの銀行のように機能させるべく、FFGと各行の間でノウハウや意識の共有することが非常に重要」と指摘。そのため、統合直後から役員層から若手まで延べ1,000名を超える人材交流を積極的に実施してきたと話しました。

ここで水谷は、FFGのブランドブックに記された「失敗を恐れない」といった組織文化の強さに言及。これを受け、五島氏はブランドブックを持ちながら、組織文化づくりの基盤となる考え方を全社員で共有していることを説明。「この中で、『失敗を恐れない』ことが強調されています」と話しました。

☆FFG統合報告書/組織文化つくりの記述があります:
https://www.fukuoka-fg.com/investorimage/ir_pdf/tougou/202110/all.pdf

水谷は、こうした組織文化の中で生まれた新しいサービスとして、「投信のパレット」について尋ねました。

五島氏は「独自開発のシステムで、国内の約4,800本の投資信託を公平中立に評価・分析し、優良な投信を組み合わせながらお客様のニーズに最適な資産運用プランを提案、その後きめ細かくフォローアップしてお客様の資産運用を長期に渡って支えていくサービス」と説明。続いて、「人々の最良の選択を後押しする」という経営理念、「お客様本位の営業」という営業理念のもと、“人生100年時代”に必要な資産づくりという背景・ニーズに対応する開発目的に言及。「現場の担当者の間には、『投信を売ったのはいいが本当にお客様の役に立っているのか』『銀行本位でやっていることではないのか』との本音がありました。私自身も自信を持ちきれないところでしたので、真にお客様のためになるサービスを開発しようと始めたのがこのプロジェクトです」と話しました。

投信のパレット(出典:ふくおかフィナンシャルグループ)
(出典:ふくおかフィナンシャルグループ)

水谷は2020年2月にサービスを開始したこの「投信のパレット」の取引残高が1,700億円、顧客数3.3万人に及ぶという反響の大きさを紹介した上で、「新規事業は簡単ではない中、社員によく伝えていることがあると伺いました」と話を振りました。

“企業の目的”と“個人の目的”を繋ぐリーダーの役割

これに対し、五島氏は、「“システム×商品・サービス×人”の大きな要素がうまく連動することでいいサービスができ、お客様が満足し、従業員の『これでいいのか』との不安も払拭でき、成果が上がって収益に繋がり、次の投資に回せるという、まさしく『論語と算盤』のような世界ができると思います」と話しました。続いて、自社がこれまで社会インフラとして様々な金融サービスを提供し地域を支えてきた志について社員に話しているとした上で、“企業の目的”と“個人の目的”について言及。企業の目的は、世の中に善をなし利益を上げ続けるという好循環を目指す存在意義の追求にある一方、個人の目的は社会で役に立ち個人として成長することにあり、「この両者を併存できるように繋ぐことがリーダーの役割」と指摘しました。「一人ひとりの従業員も、会社にやらされているのではなく、自分のやりがいや生きがいを得るために仕事に向き合うことが大事であるという話をよくしています」と話しました。

「企業の目的」と「個人の目的」(出典:ふくおかフィナンシャルグループ)
(出典:ふくおかフィナンシャルグループ)

この話を受け、水谷は「その話は最近よくスポットが当たっている事柄」とした上で、以前は会社が従業員を働かせるという関係性にあったところから、今では会社は働くインフラを提供し、従業員は持てる能力を発揮するというWin-Winの関係にあると指摘。そして、HRDグループが公開した論考・「経営戦略策定の手引き(2022年度版)の中でも、企業と個人の目的をすり合わせる必要性について書かれていることに触れ、五島氏が実践していることについて尋ねました。
(HRDグループ・論考「経営戦略策定の手引き(2022年度版):https://www.hrd-inc.co.jp/file/wp/wp_vol.pdf )

五島氏は、お客様本位の営業と持続的成長のために収益を上げ続けなければならないジレンマは誰しもにあり、従業員も“論語か算盤か”との二者択一的になりがちな難しい問題であるとした上で、「だからと言って目をつぶっていていいわけではなく、あえて認識しながら少しずつ歩みを進めていくことが大切という話をしています」と述べました。

「同じ方向に歩みを進めつつ、それぞれの立場で解釈を深めていくことで組織文化がより深まっていくように思います」との水谷の投げかけに対し、五島氏は「会社と個人の目的が結びついた時に、関わる全員がより幸せになれると思うからこそ、難しい問題ですがしっかりやっていきたいと思います。人事制度や風土づくりはその延長線上にあり、ダイバーシティインクルージョンとしても一人ひとりを理解し、活躍のフィールドを整備することが大事であると思います」と答えました。

人事領域におけるデータ活用

次に水谷は、「投信のパレット」のようなデータ活用を人事領域においても行っていることについて尋ねました。

五島氏は、人事制度の見直しについて説明。従業員一人ひとりを理解し活躍のフィールドを整える柱として、「人事評価制度の見直し」「スペシャリストコースの新設」「管理職の登用・配置を行いやすくする資格統合」を挙げました。これに当たり、個人を把握するために「ProfileXT®」(PXT)と「CheckPoint 360°™」(CP360)を活用していることに触れました。

PXTは人と職務のフィットを測定するアセスメントで、CP360は普遍的なリーダーシップコンピテンシーを測定し行動変容に導くリーダーシップサーベイです。同社にはPXTに1,286名、CP360に315名が回答したデータが蓄積、これを活用したパフォーマンスモデルを作成し、適合した人材を適性と経験のマトリクスの中から見出して優先順位をつけながら配置をしていくという人事を行っています。

また、同社では一人ひとりをよく知るための個人プロファイルシートを作成。PXTや360度評価の結果、キャリア志向や経験・適性(ポートフォリオ)、人事評価などを記載。これを育成や登用・配置などに活用しています。

ProfileXT®・CheckPoint 360°™の活用(出典:ふくおかフィナンシャルグループ)
(出典:ふくおかフィナンシャルグループ)

水谷は、ホールディングスとしてグループ企業の全従業員のプロフィールをPXTやCP360などのツールを用いながらデータとして把握している点は、「商品のデジタル活用と併せてアーリー・アダプターであると思います」と述べました。五島氏は、「データだけで決めるということはないものの、ツールが加わったことで人事の運用にバリエーションが増すように思います」と話しました。

人事データの機能と活用

ここで水谷はデータの機能と活用について言及。ビッグデータは天気予報などに用いられ、その分析結果について人は疑問を持つことなく傘を持って家を出るといった行動に繋げている一方、PXTやCP360などのスモールデータはそれ自身で何かを判断するというよりも、そのデータから本人や周囲が何か気づきを得たりすることに役立つと話しました。五島氏は、この場でサンプルとして表示した自身のPXTの結果について「割と当たっていると感じましたが、組織従順性が1よりに出ていて、複雑に感じました」と打ち明けると、水谷は「“いい悪い”ではなく、組織従順性が1よりであれば、これまでのルールにそのまま従うのではなく、ルールを創り出すという環境に心地よさを感じることができる、といった特性があります。アセスメントユーザーの皆様には日ごろから、スコアそれぞれに強みがあると話しています。五島さんのようなお立場の方がPXTスコアを開示いただくことは、オープンな組織形成に好影響をもたらします」と話しました。その後更に、水谷は五島氏が自らのデータを開示したオープンな姿勢による風土づくりへの好影響について触れた後、PXTのスコアと、経営者として創造期、成長期、変革期のいずれかにフィットする資質を示すという関連性があり、五島氏のスコアは変革期のリーダーであることを示していると述べ、「妥当性が検証できました」と話しました。さらに「蛇足ながら」と断った上で、五島氏の「エネルギー」のスコアが高くエネルギーをマルチに使うタイプであるところから、五島氏が学生時代に軽音楽部でドラム演奏を嗜んでいたことを紹介し、五島氏の人柄に触れました。

好奇心の重要性について

次に水谷は、HRDグループのホワイトペーパーにも示されていることとして、外部環境変化がスピードアップし、組織として学習する、あるいは個人の経験を次に生かすことがますます求められる時代になり、個人の興味や好奇心がますます大切になっているとした上で、五島氏に好奇心の重要性について尋ねました。

五島氏は、「デジタル技術をはじめとする専門性が重視されているものの、専門性だけを追求していればいいわけではなく、いろいろなものに興味を持ち複数のタスクをこなすといったほうが人材は育つと思います」と指摘しました。それに対し水谷は、FFGの場合は金融以外の領域にも関心を持つことを指すのかを問うと、水谷氏は「大きく言えば、仕事以外のボランティア活動や趣味も含めてのこと」と回答しました。

水谷は、ある経営コンサルタントに同様に好奇心について問うた際に、ホワイトペーパーでは好奇心の“強さ”となっているものの、これからは好奇心の“幅”と“深さ”が大事になってくるとの指摘を受けたことを紹介し、五島氏の意見と一致していることに触れました。

次に水谷は、事業環境の変化に人事も寄り添う必要があるとした上で、これからの人事機能への期待について五島氏に尋ねました。五島氏は、「人事は企業の中で最も重要な機能であると思われているでしょう」と前置きした上で、「それをいかに経営ダッシュボードで把握しながらやっていくかが重要で、人事情報の定量化や定性情報の見える化によって顧客接点との相関なども見えてくると思います。こうした“見える化”が人事の機能としても重要になると思います。エンゲージメントも丁寧に見ていく必要があるでしょう」と話しました。

「経営の羅針盤となるダッシュボードを備えることが重要であり、我々に対する期待も深まっていると感じました」と水谷は応じました。

視聴者からのQ&A

ここで、視聴者からの質問を取り上げました。

1問めは、FFGの経営統合におけるリーダーシップについて。五島氏は、福岡銀行がリードしつつ、各層の人材が積極的に交流しお互いを知り、FFGとしての考え方ややりたいことなどを徹底的に話したことが大きかったと回答しました。

2問めは、中堅社員からシニア層への育成方法について。五島氏は、若年層の育成や登用が中心となりがちな中、現在のビジネスを支えている中堅やシニア層には一人ひとり今後のキャリアを考えてもらい、デジタルの勉強など必要な教育プログラムや職場を提供することが大事と回答しました。水谷は、「企業の目的と個人の目的の一致の中で取り組んでいくべきこと」と付け加えました。

3問めは、統合直後の人材交流について。五島氏は、当初はFFGのスタイルを熊本銀行や親和銀行に浸透させていくフェーズとして役員や幹部を招き、FFGの中で業務を経験してもらうといった交流を徹底して行ったことを説明。今後はプロファイルを基にさらにきめ細かい人事交流を行う必要性について話し、本セッションを終えました。

2022年04月01日

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