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AIアナリスト・エンジニアに求められるソーシャルスキル『HRD Next 2021-2022 PROGRAM3 Day2_Session3』

AIアナリスト・エンジニアに求められる
ソーシャルスキル

【DiSC®事例】AIアナリスト・エンジニアに求められるソーシャルスキル

ゲストスピーカー:
株式会社ブレインパッド 東 一成 氏
株式会社ブレインパッド 柳原 淳宏 氏
モデレーター:
HRD株式会社 久保田 智行

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株式会社ブレインパッド プロダクトビジネス本部 本部長東 一成 氏

株式会社ブレインパッド
プロダクトビジネス本部 本部長
東 一成 氏
Azuma Kazunari

大学卒業後、鉄道系の情報システム会社に勤務の後、外資系のアナリティクスツール会社にてプリセールス、プロフェッショナルサービスの部隊でデータマイニング、BI、BSCなどの導入支援を担当。その後、海外から機械学習システム、MA、分析プラットフォームなどの日本市場への展開を支援し、ビジネス立ち上げ、プリセールス、トレーニング・導入支援、サポート、日本語化などを担当。現在もMA、拡張分析、ソーシャルメディアアナリティクス、分析プラットフォームに関する国内外のソフトウェアの展開や調査を行っている。過去にテレコム通信、空港、百貨店、小売・流通、通販、カード、証券、商社、サービスなどの様々な業種への機械学習やMAなどの分析システム導入の経験・実績を持つ。

株式会社ブレインパッド プロダクトビジネス本部 プロダクトデザイン部 部長 兼 エンジニアリングマネージャー柳原 淳宏 氏

株式会社ブレインパッド
プロダクトビジネス本部 プロダクトデザイン部 エンジニアリングマネージャー
柳原 淳宏 氏
Yanagihara Atsuhiro

自社プロダクトRtoaster、L2Mixerの開発を経て、現在はConomiのプロダクトマネージャー兼開発を担当。レコメンド/マッチング技術を中心に企画、提案から開発、チューニングまで数多くの案件に従事。また新卒採用から研修までの人材育成業務を担当。

労働力不足のなかで、時代のニーズにマッチした特性を有する人材の確保は簡単ではありません。一方、ビジネス環境の変化に伴い、人材に求められるスキルにも変化が起こり、「リスキリング」が企業の重要な課題に。着目すべきことは、高度な技術スキルとともに、ソーシャル・エモーショナルと呼ばれる対人関係スキルの重要性が増していることです。 日本の労働力不足の中で今後人材が集積する領域として、介護・医療とAI・デジタル市場が挙げられます。本セッションでは、データ解析の先進企業であり、時代を先取りするブレインパッド社AIアナリスト・エンジニアを統括する方々にご登壇いただきました。優秀なハイスキル人材を抱える組織におけるマネジメント課題と、その解決に向けた取り組みをご紹介し、必要なスキルを有する人材を集め、そのポテンシャルを活かして競争力を高めるために、これからの企業・組織はどのようなことに注力していけばよいか議論していきます。

セッション動画はこちら

データ活用人材を育成する組織が抱える現在の課題

まず東氏が、ブレインパッド社の概況を説明。データ分析、システム開発、コンサルテーション、デジタルソリューションの販売・導入といったデータに関わる全方位的なビジネス展開を行っていること、各ビジネスを行ういくつかの本部はそれぞれが上場できるほどの規模があるといった組織の特徴、約150名という国内最大級のデータサイエンティストを擁するとともに、データ活用人材を育成講座で5万人以上育成・輩出していること、およびプロダクトビジネス本部として、多様なニーズに対応するための開発および海外ソリューションの国内展開といった組織の拡大・変更を実施中で、組織全体の底上げとマネジメント力強化が求められているという現状の課題を話しました。

次に東氏は、上記のプロダクトビジネス本部の課題への対応策に言及。このほどHRDとともに、特にスキルフルで多様な人材を活かすマネジメント力強化に向けた1stステップとして、グループマネージャーや部長層とメンバーとの関係構築力強化への取り組みに着手した経緯を次のように説明しました。

「多様な部門が統合されて一つの本部になったこともありますが、コロナ禍によるリモート環境下で、チャットやオンラインミーティング中心の非言語情報が不足するコミュニケーションの難しさの中、会社全体の価値観をいかに落とし込めるか価値観が違うメンバーの成長をいかに促進させるか他部署の思いを汲んでいかにスピーディーに連携を進めるかといった課題がありました。そうした中で、相手の志向や考え方を理解することで、より強固なコミュニケーションや組織構築が行えると判断し、1stステップの取り組みを行うこととしました」

“社会的・感情的スキル”の強化へ

ここで久保田がその取組概要を説明。データサイエンティストに求められるスキルセット(参照:ブレインパッド社の「データ活用人材育成サービス」)の“ビジネス力”“データサイエンス力”“データエンジニアリング力”に加え、組織マネジメント力の基盤をつくるための“社会的・感情的スキル”の強化をテーマとして、「マネージャー自身の自己認識を強化し、多様な人材を理解し、コミュニケーションを通じて成長を促すスキルの必要性や強化策を模索していきました」と話しました。

HRD Next 2021-2022 PROGRAM3 Day2_Session3の資料

ここでは、「Everything DiSC® マネジメント・プロファイル」という心理アセスメントを活用。マネジャーとしての自己理解(セルフマネジメント)、“指示と権限移譲”などマネジメント手法への示唆(部下マネジメント)、上司との関係構築(ボスマネジメント)という、マネジャーとしてのコミュニケーション傾向に関するパーソナライズされたレポートが得られるアセスメントです。このレポートを基に、受検者同士がお互いの課題や悩みなどを話し合うワークショップも行っています。

この結果わかったことについて、受検した柳原氏が「自分自身のマネジャーとしての行動特性や強み・弱みが言語化でき、ほかのマネジャーと自身のマネジメントスタイルの違いが明らかになりました」とコメント。加えて、これから強化が必要なこととして、チームの強みの最大化を提示。そのためのメンバーの行動特性の理解と適切なコミュニケーション、および組織として意識的に伸ばす必要のある社会的・感情的スキルの習得を挙げました。また、マネジメントスタイルの強みに合わせたチームやテーマの選択にも言及しました。

アセスメントによる相互理解の意義

ここで久保田は、柳原氏の「Everything DiSC マネジメント・プロファイル」の結果を共有し、人を巻き込み、熱意を高め、協力を促していく感化型の「i」スタイルであることを紹介。柳原氏本人は、行動志向が共通する主導型の「D」スタイルに志向が伸びていることから「マネジメント層に多いDスタイルの人とも話が合い、協働できていることが可視化されて安心しました」とコメントしました。

続いて東氏も自身の回答結果について共有。「自分の行動傾向が体系化され、他者と比較した場合の考え方の違いをより深く理解できました。また、お互いが他者を理解することで心理的な安心感に繋がることも感じ取れ、会話のきっかけになるなどいい結果が得られました」とコメント。これから強化が必要なこととしては、適材適所を図ったり、メンバーレベルでも相互理解のためにこうしたツールが効果的との認識を示しました。

次に久保田は、両氏との別の場の会話における「データサイエンティストやエンジニアは言語化が得意でも、(一歩進んで)その理解、共有が重要」との発言を取り上げました。

東氏は、「当社のエンジニアらは勉強会が盛んで、インプットには長けています。その知見やものづくりの成果物を人にアウトプットするためにも相手を理解する必要があり、そうした点においても今回の取り組みは有効だと思います」とコメント。柳原氏は、「エンジニアはきっかけがあれば話したりしますが、こうした客観的なデータでお互いの違いを語り合うのは重要なことだと思います」と話しました。

「ワークショップでは、皆さんがお互いに純粋にもっと知りたいとの欲求があることが感じられ、アセスメントがそのきっかけになったと思います」と久保田は応じました。

3つの質問:1スキル 2組織・文化 3マネジメント

1.リーダーに求められる社会的・感情的スキル

久保田は、給与水準が上がる、つまり社会的インパクトが高まるポジションとなるに従い、「技術的スキル」、「高度な認知スキル」、とりわけ「社会的・感情的スキル」の比率が高まることを示すグラフを提示。その上で、日本のデータサイエンス領域をリードするブレインパッド社においては、どのようなスキルが重要で、どのようなスキルが課題となっているのか。また、どのようなスキルを元々保有する人材を採用するのか、あるいは育成できるのかを問いました。

HRD Next 2021-2022 PROGRAM3 Day2_Session3 資料

東氏は、「技術的スキル」や「高度な認知スキル」は自ら習得できるものの、組織が大きくなり人に影響を与える立場になると「社会的・感情的スキル」がなければうまくいかなくなると指摘。「イーロン・マスクやステーブ・ジョブズのような経営者は、技術的スキルや認知的スキルではなく人に影響を与えて組織を動かすスキルが強烈だからこそ、多くの人がついていった。バランスは必要でしょうが、リーダーの『社会的・感情的スキル』が強いことが組織には必要だと思います」と発言。このスキルは先天性もあるので、得意な人材がその役割を負うとして、「伸びる組織には絶対に必要な人材」と話しました。加えて、このリーダーの資質は伸ばすことが可能なスキルとして、育成体制の必要性に言及しました。

久保田は、IT系ベンチャーの技術部門の責任者による「技術的スキルだけでマネジャーを務めるのは難しく、いろいろな人を巻き込んでいく上で必ず求められる『社会的・感情的スキル』がある人が評価されている」との話を取り上げました。

柳原氏は、データサイエンティストやエンジニアは自分で学ぶことが好きで、技術的スキルは豊富に用意されたオンデマンド環境で自主的に学んでいるとした上で、「取り組んでいる課題が業務フローのシステム化といったことより、仮説をもってどうつくるのかというアイディエーション(ideation)をチームで行うことが求められる中、コミュニケーションして意思決定する必要性から、『社会的・感情的スキル』を伸ばしていくことを重視しています」とコメント。採用においては、「BrainPad Values」という行動指針で言語化されている人材像を求め、若手社員を採用プロジェクトに巻き込み、インターン制度で一人ひとりとコミュニケーションを取りながら選考していることを説明。こうしたコミュニケーション経験が、将来のリーダー就任の際のマネジメント力に繋がるであろうことに言及しました。

2.組織・文化について:機動的でフラットな組織運営

2021年秋に行われたHRD Next PROGRAM1 Day5において、米国防総省のエンジニア組織についてのセッションが行われ、「急速に変化し複雑に絡み合うソフトウェア組織において、潜在的に不安定な要件をサポートし、ポリシー、ビジネスまたはミッションの目的、および戦略に沿った組織文化が必要」といった議論が展開されました。そのカルチャーには、権力志向型や官僚志向型、そしてミッションに焦点を合わせ、信頼が重要となるパフォーマンス・オリエンテッド型の“ジェネレーティブな組織”があることが説明されました。

また、このHRD Next 2021-2022 PROGRAM3 Day2 SESSION01 のアルーン・シャーマ教授による組織と人の流動性を高める“3R”の中の“Restructure”(組織の再構成)において、従来の事業部型・マトリクス型組織から小規模チーム単位で機動的に動く流動性組織へのシフトがイノベーションや学習を促すとの議論がありました。

HRD Next 2021-2022 PROGRAM3 Day2_Session3 資料

そこで久保田は、データサイエンティスト・エンジニア組織のカルチャーとはどういったもので、チームをどのように形成し連携しているのかについて両名に問いました。

柳原氏は、自社のデータサイエンティストやエンジニアには自ら学んで共有する志向があり、フラットな雰囲気の中でポジション関係なく主催される勉強会に顔を出すといったところから、意見交換しやすいカルチャーがあると説明。チーム形成・連携については、チーム自体は職能的に分かれている一方、業態的にはバーチャル的であり、プロダクト開発においては、開発チームはデータアナリティクス本部と共に論文を読み解き、データサイエンティストによるオープンデータを用いた検証結果をパイロットプロダクトに当てて実装していくといった本部横断の連携が行われていることを例示。同様に、案件ごとに各本部が部署横断的なバーチャルチームを組成して運営されていることが紹介されました。

久保田は、事業部制でも実際は小規模チーム単位で機動的に運営されている状況を確認し、「パフォーマンス・オリエンテッドではそういった組織が必要であるとわかりました」と応じました。

3.マネジメントについて:埋もれているデジタル人材が活躍でいる場をつくる

次に久保田は、シャーマ教授の“3R”の中の“Reskill”(社員の再教育・継続教育)に焦点を当て、流動性組織のエグゼクティブには「認知スキル」「対人関係能力」「ファンクショナルスキル」が求められることに触れた上で、最前線のデジタル組織・人材を束ねるリーダー人材に求められるものについて、両名に問いました。

東氏は、「認知スキル」「対人関係能力」「ファンクショナルスキル」の必要性を考察。「以前の情報システム業界においては、『これさえ導入すれば業務は改善される』ことがある程度約束されていたので固定的な組織でもよかったところが、現在の次々に新たなサービスが立ち上がるような変化が激しい環境においては、流動的な組織が必要になると思います」と指摘。したがって、そうした環境への追随やメンバー指導ができるリーダー像が求められるとした上で、「例えば、なぜ3rdパーティークッキーが問題化し規制が厳しくなったのかといった変化の本質を把握し、単なる知識ではなく、社会や技術とサービスの関係性を結び付けて発信できるための教養や知見の再教育が必要」と話します。

株式会社ブレインパッド
プロダクトビジネス本部 本部長東 一成 氏

続けて東氏は、100社以上への企業への提案や支援を経験した上で掴んだ数社の成功企業の共通点を提示。「その部長が社長と太いパイプを持っていた」「中心人物は業務経験豊富」「打席に多く立ち運をつかんだ」などの条件を列挙し、結論として「『(うまく)失敗するという実績と成功』を積みながら、『理論と現実』『データとツール』『組織と人』における曖昧さのバランスが取れていた人」の存在を示しました。

そして東氏は、「よく『デジタル人材がいない』と聞きますが、結構スキルを持った若手がいるものであり、『あなたは周りの5人の平均値』という言葉があるように、優秀なデジタル人材が周囲の凡人の影響で押し下げられているパターンが見られます」と指摘。デジタル人材を活用する場を組織として設ける必要性に言及しました。

人に関する情報を軸に距離を縮める

この話を受け、久保田は「ビジネスリーダーにも共通する話」と応じ、最後に両名に視聴者に対するメッセージを求めました。

柳原氏は、デジタルなものを学ぶだけでなく、人に伝え組織で活用する際に障壁となるのは「相手を知らないということ」と指摘した上で、「コロナ禍で100人以上の新人が入社し、他の社員とは採用段階含めてオンラインでしか会ったことがないという状況の中、その人に関する客観的な情報を軸に距離を縮めることが大事だと思います。ただがむしゃらにお互いを知りましょうと言うのではなく、デジタルでできること、オフラインでできることを組み合わせてコミュニケーションを取り、チームの力を最大化していくことが大事だと思います」と話しました。

株式会社ブレインパッド
プロダクトビジネス本部 プロダクトデザイン部 部長 兼 エンジニアリングマネージャー柳原 淳宏 氏

東氏は、流動性組織におけるリーダーシップはどのビジネスでも同様に必要である一方、「あっと言う間に回っていくデジタルとの違いは大きい」と指摘。そうしたデジタルに関わる組織でも、ある程度の規模であれば急旋回は難しく、徐々に向きを変えていく必要があるとして、「全員でゆっくりだけれども確実に変えていき、変化に対応していくことが大事で、そのためにもリーダーには『社会的・感情的スキル』が必要だと思います」とコメントし、本セッションを終えました。

※ブレインパッドのソリューションの紹介はこちらをご参照ください。

2022年01月28日

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