【DiSC®事例】組織開発とタレントマネジメントに活用するDiSC®内製で素早く組織作りの基盤をつくる、成長企業の事例
株式会社Speee 人事部 部長
坂本 明美 氏
株式会社ビズリーチ
HRMOS事業部 プロダクト企画部プロダクトマーケティングマネージャー
鈴木 翔 氏
HRDグループが主催するアセスメントフォーラムオンライン2020「ReStart」。今回のテーマは「組織開発とタレントマネジメントに活用するDiSC®」です。株式会社Speeeの坂本様と株式会社ビズリーチの鈴木様をお招きしてお話を伺います。事業環境の変化スピードがますます速くなる時代に、いかにスピーディーに組織づくりをしていくかということは、大きな課題です。様々なバックグラウンドを持って集まった従業員の間に、いかに短期間でコミュニケーションの共通言語を築き、カルチャーを強化するか。時代の流れをつかみ、成長著しい両社の勢いをそのまま感じることのできる対談となりました。HRDグループの久保田がモデレーターを務めました。
ゲストスピーカーのご紹介
坂本 明美 氏
株式会社Speee 人事部 部長
新卒でリンクアンドモチベーション入社。クライアント企業のコンサルティング営業に5年従事。2009年株式会社Speee入社。人事全般の立ち上げに従事。現在は全社の組織開発を担当。
鈴木 翔 氏
株式会社ビズリーチ
HRMOS事業部 プロダクト企画部プロダクトマーケティングマネージャー
ソフトバンク株式会社、ワークデイ株式会社を経て、株式会社ビズリーチに入社。人事企画、組織開発、HRIS(人事管理システム)のマネージャーをつとめた後、HRMOS事業部にてプロダクトマーケティングマネージャーを務める。
組織の成長とトップの一言~内製化での導入・浸透フェーズ(株式会社Speee様)
久保田:DiSC®アセスメントをコミュニケーションの共通言語として使い、組織文化をつくっていくプロセスを、導入・浸透・活用の三つのステップでお届けします。導入というのは、DiSC®とは何かを知って、自分と他者との違いや自分自身は何が欲しいのかを知ることです。浸透のフェーズでは、全メンバーが共通認識を持つようになります。そして活用フェーズでは、ビジネスシーンでの活用を深く知り、行動変容、関係性の変化、成果につなげていきます。それぞれステージが違う2社に事例共有いただきます。
まずは導入から浸透に入るフェーズについて、Speee社の事例を発表いただきます。坂本さんお願いいたします。
坂本:株式会社Speeeで組織開発の責任者をしている坂本明美です。弊社は、7月にJASDAQに上場させていただき、従業員は400名を超えてきている会社です。BtoB、BtoC、MarTechセグメント、X-Techセグメント、デジタルトランスフォーメーション等、9つの事業を幅広く展開しております。400名規模のIT企業の中でも、業種が9つ、新規事業が3つありますので、エンジニアから営業まで非常に職種が多く、今は多岐にわたるスキルセットやスタイルを求めているフェーズです。昔、50~60人くらいの頃にDiSC®を実施した際は、Dとiのスタイルの人で8割程度を占めていたと思いますが、今は非常に多様なスタイルが増えてきていて、つくり上げてきたものをどう耕して定着させ深めていくか、そんなフェーズに入ってきているのはDiSC®スタイル上からも実感しています。
DiSC®とは付き合いが長く、以前は、外部講師に来ていただき研修を実施するスタイルでした。毎月やっていたわけではないので、全員の共有言語になりきれないところが反省点としてありました。そして組織が成長し、職種や人も増えて多様化してきた中で、DiSC®を軸にそれぞれのスタイルを活かし合う人材育成、組織開発をしていきたいと内製化を進めました。社内にファシリテーターがいることで、「来週このチームで1つやろう」あるいは「DiSC®を中心としたペアワークをやろう」など組織内でフレキシブルに取り組めていることができるようになりました。
久保田:DiSC®を導入する上で代表の大塚さんはどのように思われていますか。
坂本:1年前、弊社メンバーがDiSC®認定ファシリテーター資格を取得するきっかけとなったのは、代表の大塚から久しぶりにDiSC®を受けさせたいとチャットで言われたことでした。その際、社内に資格保持者がおらず、DiSC®を実施することができなかったのですが、代表がそのタイミングでふと「やろう」と言ったことが再び取り組むことになったきっかけとなりました。他の様々なツールと比較検討しましたが、DiSC®はわかりやすく、一度学べば浸透しやすいなど、もっとも優れた点が多く、導入に迷いはありませんでした。
普段一緒に働く部署単位でのワークショップ(株式会社Speee様)
坂本:浸透は現在進行形で、働く仲間とお互いのスタイルを知っておくことが大事なので、各事業・職場単位で、約3時間のDiSC®ワークショップを開催しています。
鈴木:ワークショップでは、意図的に上司部下を組み合わせるのでしょうか。
坂本:グループ構成はスタイル毎ですので、同じグループに新卒と部長や課長がいることもあります。普段から職場の風土として、発言するときには「誰に言うか」より「何をテーマに言うか」を大事にしていますので、組み合わせやチーム分けについてはあまり気にしません。
久保田:ビズリーチさんとアプローチが違うので、面白いことだと思います。その辺りは後ほどお話しいただきます。
坂本:新卒に関しては、担当するメンターとのペアワークを実施します。今年の新卒は、コロナ禍の状況もあり、より手厚くオンボーディングをやりたいと思っていました。ワークプレイスプロファイル、つまり本人のDiSC®の結果について詳細にまとめたものを、新卒と最初に業務を教える一番密な人であるメンターと交換し合って、ペアワークで互いの特性の理解を図るものです。
メンターは、熟練の上長というよりは2~5つ上の先輩であることが多く、互いの特性を知る上では、かなりスムーズに初期段階のオンボーディングができたと思います。新卒はまだ一人も辞めていないので、現段階ではオンボーディングはだいぶ効いており、そこでDiSC®には非常に頼りになっています。内製で、18名程度で3時間の効果的なDiSC®グループ研修を行うためには、どうしたらよいかを考えながら設計しています。
鈴木:なぜ3時間なのでしょうか。
坂本:一般的に外部にお願いすると1日から1日半の研修になりますが、内製だと短時間でも実施できます。3時間という理由は2つあり、1つは午前の3時間、午後の3時間というようにフレキシブルに時間を確保しやすいので、現場の合意を取りやすいことです。私は子供がいて時短勤務でもあるので、その時間内に研修ができるよう設計していることもあります。もう1つは、事前に回答して手に入れたレポートを読み込んで考えてから研修に臨む従業員も多いので、かなりショートカットして効率的に取り組めるから、という理由です。その点は、協力して取り組んでくれている従業員に感謝したいと思います。
久保田:坂本さん、導入までの経緯や詳細の共有、ありがとうございました。まず導入して、それから浸透させる、でもそれは、DiSC®をやること自体が目的ではなく、組織をつくることがゴールにあり、その先何のためにやっているのか、ということが重要です。ここからは、実際に実践されているビズリーチさんにお話をお願いします。
データを一元管理して成果創出につなげる活用フェーズ(株式会社ビズリーチ様)
鈴木:株式会社ビズリーチの鈴木と申します。2014年に入社しDiSC®の導入プロジェクトに関わらせていただきまして、社内で研修を行いました。現在は、人財活用プラットフォームHRMOSを運営する事業部で、人材管理やタレントマネジメント、プロダクトの企画をしています。今日は人事や従業員に対してDiSC®をどう使っていくのか、活用の側面でお話ししたいと思います。
そもそも弊社がなぜHRMOSを提供させていただいているかと言いますと、ビズリーチも人事データの管理で苦戦していた企業で、そういえばあの人のDiSC®は、情報は、というときに、かなりバラバラになっていた状況がありました。社内で、その状況を改善するノウハウをみなさんにも是非ご利用いただきたいと、HRMOSを提供しております。
私からは活用フェーズというところで、データを一元管理する、つまりデータを1ヶ所で管理することとその中で共通言語を持つことを、メッセージとしてお持ちしました。
ビズリーチのDiSC®導入事例は、HRDグループ様のニュースレターに2015年と2018年頃に事例を公表していますので、ご興味のある方はご覧いただければと思います。2015年はどちらかというと導入の事例で、2018年は活用、浸透の事例になります。
DiSC®を実施されているみなさまの会社も、同じようなメッセージングをしておりますが、ビズリーチでのDiSC®トレーニングの最初には、必ず、「自己と他者を理解し関係性を築くための共通言語」であるというメッセージを提示します。ベンチャー企業では、Dのような人達がリーダーシップを発揮して、Dではない人達は、私はリーダーにはなれないのかと思いがちですが、それは誤解です。みなさんD、i、S、Cすべてお持ちです。それは同等の価値で、どういう要素が普段出やすいのか、ということや、D、i、S、Cそれぞれで素晴らしいリーダーはいるというお話をしています。
坂本:重要な観点だと思います。DiSC®を何でやるのかと役員に聞かれ、その瞬間に一言で答えないといけないシーンがあります。スムーズにいく、仲良くするなど不要な摩擦を生まないというのは、手法であって目的ではないので、やはり顧客価値、成果、業績など企業にとってゴールに近い領域に対してDiSC®というツールがどういうインパクトを残すのかを答えなければなりません。それぞれの人がお互いの力を伸ばし合う関係性をつくることが、最大の成果につながるから、本当に必要だと思って入れていますと伝えています。人事の方あるあるで、コミュニケーションがスムーズにいく仲が良い職場づくりをします、と言われますが、経営の方からすると、それだとちょっと投資するにはもう一押しと思われます。
鈴木:事業会社は多職種の人がチームで働くので、私もiが強い傾向ですが、チームとしてCが少ない傾向にあるということであれば、どんどん適応していきます。例えば、全員フォワードのサッカーチームでは勝てません。やはり、いろいろな人の特性を理解することで、業務や目的達成のためにスムーズなコミュニケーションを取っていけるようにという話をしています。弊社として、チームビルディングをするときに使うことがあります。
弊社では研修を行ったあとにどのようにDiSC®を活用していくかという話をさせていただきます。まずHRMOSの従業員データベースには、一人ひとりの入社年、DiSC®が入力されていて、全社員どなたでも閲覧できるようになっています。
HRMOSに入力されたDiSC®の活用例としては「コミュラン」があります。「コミュラン」は、部署を横断して交流してもらうために、従業員同士でランチをするものです。弊社のエンジニアが開発したシステムで、一緒にランチをするグループが組まれます。久保田さんと坂本さんと私で今月ランチに行ってくださいとなった場合、その方の情報をHRMOSで知ることができます。DiSC®についても事前に見ることができますので、鈴木はi、坂本さんはDですねと、共通の話題として話を広げていったりすることがあります。
人事チームが、「チームのDiSC®一覧を出して欲しい」と依頼を受けることもあります。チームにDの傾向が多めですね、ということを直感的に把握したり、部門や職種ごとに他のHRデータとDiSC®スタイルを一緒に見たりすることで、人事や業務の施策に生かしていくことを、ビズリーチでは行っています。
組織文化に与える影響/社内での活用(株式会社ビズリーチ様)
坂本:採用では、どの段階でDiSC®に回答してもらうのでしょうか。
鈴木:候補者には回答してもらいません。どちらかというと当社の面接官が、DiSC®を理解し候補者とのコミュニケーションを円滑にするために活用しています。
久保田:社内で具体的にどのように活用していますか。
鈴木:内定後の意向や面接官のアサインについては、DiSC®を軸に「候補者はこのスタイルのように見えるから、面接官にはこのようなアプローチをお願いしましょう」といった形でのDiSC®の活用も見受けられます。
セールス場面では、商談時に、どちらかというとDスタイルが強いと思われる社長様を再訪する場合は、プロセスを長く話すのではなく結論から話していきましょうとDiSC®をベースにコミュニケーションを考えることもあります。。
またキャリア支援の中で、事業部人事やHRが面談記録を取る際に、参考情報としてDiSC®を基にコミュニケーションをとることもあります。必ずDiSC®に言及しなければならないというよりも、どちらかというと自然に「最近入社した鈴木です。私はiスタイルですが、みなさんは何ですか?」と話をしたり、マネージャーミーティングで「この人はSスタイルなので、このようにフィードバックをしてみます」と発言したりするなど、会話の端々で混ざることが多いと思っています。
久保田:業務、ビジネスでより大きな成果をスムーズに出していくための関係性をいろいろな領域で効果的にしていく、ということでしたが、 ビズリーチさんのカルチャーが組織に与えている影響、これで組織がこうなりました、と言えることはありますか?
鈴木:先ほどの話につながりますが、100人から200人までの従業員数だと、誰がどういう人材でということが把握できますが、2015年位から300人を超えてきてそれが難しくなりました。違うフロアで働いている人は名前くらいしかわからない、ということになります。それだとコミュニケーションの摩擦が生じます。事業の成長スピードを高めていくためには、その摩擦は限りなく少ないほうがいいので、そのタイミングでDiSC®を導入しています。
久保田:Speeeさんはいかがでしょうか。これから期待することなど、教えてください。
坂本:多様性の理解に一役買うものがDiSC®です。多様性でよく言及されるのは、年齢やグローバルのことだと思いますが、その多様性があっても、ほとんどの人がDだとしたら、別の軸で多様性がなく画一的だと思います。
DiSC®のようないろいろなスタイル特性を持った人がそれぞれの強みを持ちより、一堂に会していることも組織の多様性だと思います。弊社はそちら側の多様性を大事にして、その中でどういうふうに強みを発揮して価値を出せるか考えています。
数年前に、代表が年頭所感で自分の考えを従業員に発信する中で、「強みの総動員」という言葉をよく使うようになっていました。ベンチャーとして、一人ひとりが全部できなくてはいけないというフェーズから、自分の強みで組織や顧客に最大限の価値を出せばよい、という考え方に変わったのです。この考えに基づいた場合、自分の強みを最大限生かす、生かしてあげられる職場の相互理解に、DiSC®はとても役に立つと思います。その観点でDiSC®を使いたい、使えていると思っています。
久保田:事業の成長には、人材の多様性とその力を活かす組織文化づくりが欠かせないことを確認できる事例共有となりました。坂本さん、鈴木さん、ありがとうございました。
※本記事は、2020年12月対談時の内容です。
2020年12月18日