人的資本経営への取り組み方と2023年の事業×組織×人材戦略
- 経営戦略策定の手引き(2023年版) -
HRD株式会社・プロファイルズ株式会社 代表取締役
韮原 祐介
登壇者のご紹介
HRD株式会社・プロファイルズ株式会社 代表取締役
韮原 祐介
Nirahara Yusuke
経営コンサルティングファームにて国内外の戦略、組織・人事、システムなどの改革に幅広く従事した後、データサイエンス専業のブレインパッドに参画し、経営企画部長として立案を主導した中期経営計画では、売上2倍、経常利益12倍を達成。現在は、HRDグループにて、人事・組織領域を始め、デジタル領域のデータ・AI活用、サイバーレジリエンス強化を強みとしたコンサルタントとして活動するかたわら、東京大学工学部・工学系研究科にて、AI・データ活用、ソフトウェアエンジニアリング等に関する講義を担当。また、東進デジタルユニバーシティで、AIとDXに関する講座を担当。
著書に「いちばんやさしい機械学習プロジェクトの教本」(2018年)、「サイバー攻撃への抗体獲得法 ~レジリエンスとDevSecOpsによるDX時代のサバイバルガイド」(2021年)がある。
昨今、人的資本経営の推進が様々な企業で課題となっています。これまで実施してきた、伝統的な人事システムからの脱却が求められており、経営戦略に基づく人事戦略を実行し、組織を大きく変革していく機運が高まっています。
2022年は「人的資本経営元年」とも言える年でした。今後の日本企業の飛躍のためには、人的資源を人的資本と捉え直して人的資本経営を推進していくことを、経済産業省なども求めているところです。「人的資本の価値を高めることで、企業価値を高める」という考え方にシフトしていかなくてはなりません。
当セッションでは、弊社代表の韮原祐介が、2023年における人的資本経営への取り組み方をはじめ、企業の経営戦略、それに基づく組織戦略・人事戦略はいかにあるべきか、また事業・組織・人材の戦略大転換はいかに起こすべきなのか、についてお話しました。
人材版伊藤レポート2.0では「3P・5Fモデル」として、人材戦略に求められる3つの視点・5つの共通要素を提唱しています。経営戦略と人事戦略を連動させる、目指すべき経営戦略の実現に合わせて柔軟な人材ポートフォリオを構築するなど、さまざまな取り組みが提案されています。
しかし、手法・事例をまねるだけでは意味がありません。企業ごとに状況が異なるため、経営戦略はもちろん、人材戦略やタレントマネジメントのあり方についても、企業ごとに何をすべきかを考えて、選択していく必要があります。
2023年の経営戦略や人事戦略を策定していくために特に念頭に置いておきたいのが、ロシアによるウクライナ侵攻後の世界構造や台湾有事の可能性の高まりを踏まえた、経営環境の大きな変化です。日本が米中の二大覇権国の争いの狭間に立たされるなど、国際情勢の変化は、企業の経営環境にも大きな影響をもたらしていきます。今から万が一の有事に備えたシナリオプランニングを行うなど、不可避の変化に備えていく必要があります。
いつ何が起こるのかわからない状況下で重要となるのが「流動性組織」の考え方です。組織の流動性を高めるには、3つのRが存在すると、マイアミ大学ビジネススクールのアルーン・シャーマ教授が提唱しています。
- Restructure:大規模の組織マネジメントから、小さいチームに転換
- Reskill:一般的なT字型スキルから拡張T字型スキルへ転換
- Rescale:時間や予算リソースに伸縮性を持たせる
組織が流動的になるためには、人材にも高い流動性が求められます。今後の人材戦略の在り方として、「人材マネジメントのパーソナライズ化」「人材マネジメントへのデータ活用」など、個々に向き合ったタレントマネジメントが求められます。たとえば、即時に個人に合わせた評価を行う、マイクロフィードバックや、社員の動機や能力に沿った「おすすめのキャリア計画」を提示したりするなど。DiSC®やProfileXT®などのアセスメントを利用して社員のパーソナリティに関する情報までも活用して、個々に合わせたきめ細やかなタレントマネジメントの実現が今後さらに進んでいくでしょう。
これまでの人事制度は全社員一律で画一的なものでした。しかし、人的資本経営が進展していくと、個々の人材の投資価値の差が明らかになっていき、メリハリのあるタレントマネジメントに転換していくことになるでしょう。一般企業の社員もプロスポーツ界の選手のように年収に差が開いていき、投資価値の低い人材から早期リタイアを迫られるような時代がやってくるものと考えられます。
人的資本経営の推進は、日本のタレントマネジメントの大転換に向けた、とても小さな一歩でしかありません。企業にとって、近未来の戦争有事も視野に入れた組織体制や人材の確保が極めて重要になります。流動性の高い組織体制だけでなく、個々の人材についても、不測の事態が突然やってきたときの対処能力や必要なスキルを迅速に獲得できる学習能力の向上が求められていくことになります。
当セッションの詳細は、下記の動画からご覧いただけます。今後の経営戦略策定に役立つヒントが必ず得られるセッション内容となっておりますので、経営戦略の策定に携わる方や、人事責任者や人材育成に関わる方々は、ぜひ動画をご視聴ください。
動画申し込みURL:https://survey.hrdgroup.jp/zs/0yBqr3
2023年01月26日