ピープルアナリティクスの未来、その先へ
すべての働く人を笑顔にする人材戦略とは?
株式会社NTTデータ 第三金融事業本部 e-ビジネス事業部 部長
竹村 昌也 氏
株式会社NTTデータ 法人C&M事業本部 法人コンサルティング&マーケティング事業部 部長
近藤 博一 氏
登壇者のご紹介
ゲストスピーカー
株式会社NTTデータ 第三金融事業本部 e-ビジネス事業部 部長
竹村 昌也 氏
Takemura Masaya
2006年より金融セグメントにおいて、インターネットバンキングなどの決済サービスの企画・開発に従事。
2015年から4年間は人事本部にて新卒採用・中途採用の企画・運用のマネジメントを経験。
2019年から現職にて法人向けサービス開発を所掌する一方で、現場と人事の両方の経験を活かして、部門の組織変革やピープルマネジメントへの意識向上に努める。
ゲストスピーカー
株式会社NTTデータ 法人C&M事業本部 法人コンサルティング&マーケティング事業部 部長
近藤 博一 氏
Kondo Hirokazua
2002年のコンサルティング部門発足当初より、一貫して経営管理やグランドデザイン策定等のコンサルティング業務に従事。2020年に法人ソリューション分野に異動し、人材面の課題が多いことに衝撃をうけ、People Analyticsを使って人事施策を科学するデジタルタレントチームを立ち上げ、現在に至る。
モデレーター
HRD株式会社 ディレクター パフォーマンスコンサルタント
水谷 壽芳
Mizutani Hisayoshi
HRテクノロジー活用による経営強化・改善のコンサルティングを提供。製造業・IT業界・製薬企業を中心として、組織・人事コンサルティングに関する約10年の経験を有している。日本国内における新たな人材アセスメント・ツールの普及を志向して、70社を超える戦略的ビジネスパートナーとの新規事業の立ち上げに関わってきた。ビジネスパートナーの事業支援・コンサルティングスキル指導に定評があり、ProfileXTなどの人材アセスメント認定セミナーの講師としても、延べ600名以上の認定資格者を養成してきた。
セッション概要:https://www.hrd-inc.co.jp/hrd-next/2024/#modal-session4-day2
このセッションでは、人的資本経営の実践とピープルアナリティクスの革新的な旅路を深掘りします。
2021年のHRD NeXTから始まったこの旅路を経て、NTTデータ社がどのような進化を遂げ、どのような未来を描いているのかをゲストスピーカーとの対談でお届けします。
デジタル技術と人間中心のアプローチを融合させ、働く人々の幸福と組織の成長の両立を目指す同社のストーリーを通じて、新しい人材戦略の方向性について探求します。
本セッションでは、ピープルアナリティクスの概要、デジタル人材育成、キャリアカルテの導入、および人材ポートフォリオの構築に至るまで、多岐にわたるトピックを取り上げる予定です。
NTTデータの施策展開や、実際の組織活性化のエピソードについても共有いただきます。
組織のリーダー、HRプロフェッショナル、そして働く人々の幸福を追求するすべての人に対して、実践的な学びと未来へのインスピレーションをお届けする予定です。
ぜひ、ご参加ください。
経験と勘に基づく人事を変え、すべての働く人が笑顔になる組織へと
水谷:本セッションでは「ピープルアナリティクスの未来、その先へ」をテーマに、すべての働く人を笑顔にする人材戦略について考えていきたいと思います。お招きしていますのは、NTTデータの第三金融事業本部 e-ビジネス事業部 部長でいらっしゃる竹村昌也さん。そして向かって右側が、同じくNTTデータの法人C&M事業本部 法人コンサルティング&マーケティング事業部 部長の近藤博一さんです。
まず簡単に自己紹介から始めていければと思います。竹村さんは、NTTデータの中で事業部でのマネジメントのポジションのほか、人事領域のご経験も有していらっしゃると伺っています。まず自己紹介をお願いできればと思います。
竹村:改めましてNTTデータの竹村です。現在は、法人向けの決済サービスの企画や開発のマネジメントをしておりまして、先ほど紹介のあった部署で今5年ほど勤めています。その前に人事部に4年ほどいて、そのときは採用領域で、新卒採用や中途採用のマネジメントをしていました。
人事と事業部門、両方の経験を持って、今は事業部門の方でサービス開発に携わりながら、組織開発や採用、育成といったところに注力をしている状況です。
水谷:お聞きになっている皆さんは、事業部サイドで組織人事を見ている方もいますし、人事部門で活躍されている方もいらっしゃいます。私たちのアセスメント自体をサービス展開している方々なので、竹村さんのような方からコメントいただけると少し期待が上がるかなと思います。そして、お待たせしました、近藤さん。自己紹介をお願いします。
近藤:NTTデータの近藤と申します。入社以来ほとんどのキャリアを、コンサルティング担当として過ごしていて、最初のころは経営管理などに携わっていましたが、ある時、スタッフに異動になったんですね。もう完全に向いてないんですよ。行ったらやはり浮いてしまって、あっという間に返品されて、またコンサルティング部門に戻ってきました。笑
戻ってきたら、経営管理のポジションは優秀な人が務めていたので枠がなくて、人事でもやるかと始めて今に至っています。なので、適性をちゃんと見極めて配置してほしいという強い思いがあり、人材アセスメントツールの「ProfileXT®」にはとても共感しています。
水谷:ありがとうございます。お二人の来ているTシャツについても少し語っていただきたいと思っていますが、いかがでしょうか
竹村:先ほど私から決済サービスの企画を担当していると言いました。2023年10月にインボイス制度が始まりましたが、私は決済サービスを担当していますが、そういった請求サービスと繋ぐような法人向けサービスをローンチしまして、そのときにプロジェクトを盛り上げたいということで自費で作ったのがこちらのTシャツです。「TetraBRiDGE(テトラブリッジ)」という、橋のロゴになっています。
近藤:在庫があるので、今日の最後に視聴者プレゼントにしてもいいですよね(笑)。
竹村:そうですね(笑)。開発を担当する人や営業をやっている人など、チームメンバーの役割はバラバラですが、こういったTシャツを作るとチームの一体感ができますよね。みんなに着てもらって写真を撮ると、照れながらも盛り上がってもらえるので、結構よいアイテムになっているかなと思い、今日着てきました。
水谷:ありがとうございます。NTTデータさんのロゴも入っていますね。
竹村:そうですね。
近藤:僕のTシャツには、NTTデータのロゴを入れられなかったのですが、これは、スタッフ職になったときに、「お前ちょっと変わっているから、コラムでも書いてくれ」と言われて結構書きました。ただ、コラムを書くようになったら、編集担当の人が、ちょっとしたキャラクターがほしいということで、作ってくれました。
そのうち、当初の絵だけでは物足りなくなったので、当時の新入社員で絵心がある社員がいろんな絵柄を増殖しくれて、「もうビール飲みたくてしょうがない!」とアピールできるTシャツを作ってくれました。LINE®のスタンプにもなっているので、ぜひ買ってください。
水谷:スタンプにもなっているということで(笑)。それでは、アナリティクスの未来を起点にしながら、話を進めていきたいと思います。
Day1ではHRD NeXTというイベントの開催背景について、当社代表の韮原から想いを共有させていただきました。HRD NeXTは人材組織関連の業界の未来の指針となる提言や、事例の共有を行う「What’s NeXT」が出発点でした。実は、NTTデータさんは、本イベントに登壇いただくのが今回で2回目です。
2022年の1月に登壇いただいたときは、「デジタル変革とピープルアナリティクスの未来」ということで、ここでも未来について語っていただきました。そのときは、同じくコンサルティング事業部の東谷さんや、SDDX事業部の内山さんにお越しいただきました。そこで、日本の人事をアップデートし、人材価値を最大化することを狙いに、人材アセスメントをどう活用していけそうかお話いただきました。
この企画をお願いしたときにも強く思いましたが、未来を語るというのはなかなか難しいな、と。そもそも人は、変化を忌み嫌うところがあります。そんな中、未来をテーマにNTTデータさんに発表いただいたことは、とてもありがたいと思っています。今日は、Tシャツコンビのお二人から、その後の未来がどんなふうに形作られたのかをお話いただくのが骨子になっています。
進め方のアジェンダもありますが、予定調和を壊していこうというチャレンジにも3人で迫ってみたいと思います。近藤さん、まずはピープルアナリティクスについて話したいと思います。2年前に事業部として人材開発に取り組むとなったとき、なぜピープルアナリティクスにフォーカスして取り組みを考えたのか、聞かせていただけますか?
近藤:自己紹介でも話したように、やはり実際にスタッフになってみると、勘と経験と度胸でいろんなことを決められている場面が結構たくさんありました。ですが、それはだいぶ時代遅れだと思っていて、とくに人事の領域はほかの領域よりも出遅れている感じがしています。
であれば、きちんとデータに基づいて、誰がやっても似たような結果になるという状態にしていかなければいけないだろう、という考えからピープルアナリティクスに取り組むことになりました。
水谷:なるほど。デジタルという大きな文脈の中で、組織人事の領域でもデータ活用を進める動きがあったということですね。その当時から、近藤さんはその中心を担ってきたと思いますが、取り組みはスムーズにいきましたか?
近藤:いえ、結構スムーズにはいかなくてですね。。。まず、人事に関するデータが揃っていなかったり、揃っていても不完全だったり、あるいは人事本部にデータを出してもらうための社内調整だったりに結構時間がかかったことが当初の悩みですね。
それを何とか乗り切ってピープルアナリティクスを作った後の悩みとしては、結果は出ましたが、「それはそうはいっても実行はできないよ」といった感じで、実行してくれる人がいませんでした。そうした2段階の壁があり、そこをどうやって乗り越えていくかが課題でした。
水谷:NTTデータ社といえば、本当に日本の中でも知らない方はいないような企業さんでいらっしゃるので、そのNTTデータさんが壁をどう乗り越えてきたのかについては、視聴者の皆さんの関心事項でもあると思います。最初は、人事の方々とどう事業部としてコミュニケーションをしましたか?
近藤:まずは人事本部と一緒の取り組みだったので、「事業創出人材の分析」というテーマで共に取り組んだので、そこに関するデータは比較的出してもらえました。一方、なかなか思うようにいかなかったのは、その人事部門が持っている本丸のデータを出してもらうときですね。
ただ、年齢や所属といったデータは人事に聞かなくても分かりますし、ProfileXT®のデータだけで分かることもだいぶあります。分かる範囲のデータだけでも結果は結構出ますので、最近は人事本部にデータを出してほしいとは、言わないようにしています。
水谷:社内の調整も簡単ではない中で、途中で取材を受けるような取り組みもあったと聞いています。
近藤:これですね、事業創出に適している人材を社内で見出していく取り組みの中で、「事業創出人材」だと社内で言われている人と、そうではない人を比較して、どういった点に差があるのか特徴を分析しました。
単純にProfileXT®のデータだけではなく、「チャレンジシート」と呼んでいる評価や育成において定期的に記入しているシート上の実際のテキストを分析しました。例えば、「この用語があったらリーダーに向いている」というように、かなり地道な作業をして、解析して分類していきました。その結果が次のスライドになります。ただ、スライドはイメージですから、実際の結果が本当にこうなったわけではありませんが。
大きい丸と小さい点があります。大きい丸が、事業創出人材のプロットされている範囲で、小さい点がそうでない人間がいるところです。4つぐらいの分類ができて、一番左上にあるのが起業型です。こういう人は例えば黙っていても、事業創出をしたがる人といったイメージです。逆に右下の方の人は、どちらかというとPMや、もっと地に足がついたことが得意な人といった傾向が出ています。
ただ、どのグループでも事業創出人材は輩出できているので、それぞれのタイプごとにどんなことをしたら事業創出人材として成長できるかという育成プランを立て、それを参考にしながらオペレーションしていきましょうという取り組みです。
水谷:こういったことに取り組まれて、「アナリティクスの未来」について語った際にメディアに掲載されたということで、好ましいことだと思います。反響はありましたか?
近藤:新聞記事を見た人から、説明に来てほしいと呼ばれることは何度かありましたね。
水谷:どういう業界の方ですか?
近藤:金融業界の方が一番多かったですね。
水谷:竹村さん、この話はご存知でしたか?
竹村:いえ、しょっちゅうメディアに載っているから、何となく見て知っていたくらいです。先ほど、記事の写真がスライドに投影されましたが、あの写真はどこかで見かけた記憶があります。私も以前は人事部にいて、人材開発担当が近藤さんと一緒にプロジェクトを進めていて、その部署のこともよく知っていたので、「何かやっているな」という程度でした。
近藤:ちなみに、先ほどの記事の掲載先は、自社のオウンドメディアです。
水谷:その記事を読みたい方は、NTTデータのオウンドメディアを検索いただければ、内容が書いてあるということですね。そのときも、Tシャツ着ているんですね。
近藤:あのときは、まだオリジナルではありませんが。結局、ビールの人みたいに思われて困っちゃうんですが(笑)。
水谷:では、反響もしっかりあったということで。そういう意味では、この取り組みを深めるよい機会になりましたね。
一事業部門発の取り組みを、全社に広げられたわけ
水谷:今日すごくお伺いしたいと思ったのが、NTTデータのような大きな組織で、一事業部がよいと思って仕掛けたことが、どんなプロセスで社内に浸透したのかということです。
竹村さんが結果としてアナリティクスを横展開し、最終的に全社で活用していく話になったのは、示唆に富んでいると思っています。例えば、世の中変革が必要だといってもなかなか変革が進まないときのヒントが得られたらと思います。
これは竹村さんへの質問になりますが、ピープルアナリティクスの取り組みは、メディアに載ったからやったわけではありませんよね。どんなきっかけがあったのでしょうか? 取り組みの根拠をお話いただきたいと思います。
竹村:まず、私と近藤さんは直接繋がっていなかった。何なら、今日初めて会ったくらいです。ただ、私が今所属している事業部の組織長が、その前人事部にいたんですね。その組織長が人材開発担当も所掌していて、ここに写っている女性が部長なんですが、組織長に「こういうことやっているんだ」と話したことがあって、組織長から今度は私に話が下りてきて、「こういう打ち合わせあるんだけど、竹村さん出てくれないか」と。「分かりました、どんな打合せですか」と聞いたら、これだったということですね。
水谷:社員の方にも協力いただかないとプロジェクトを進められません。
竹村:先ほど、事業創発人材やイノベーターと近藤さんが言っていましたが、新しいサービスを作っていくのはやはり人です。新サービスの構想・開発は我々の事業部側で進めていくんですが。
では、誰が新事業を創出できるのか、どう配置して育成するかという点は、やはり難しいポイントで、正攻法があるわけでもありません。そういったタイミングで、ProfileXT®を導入するという話を聞きました。
ProfileXT®を受けたことある方は分かると思いますが、回答に時間がかかるので重たいと思います。それをやってほしいと言って、受けてくれるかどうかも分かりませんでした。
その際、先ほど出てきたあの組織長が「まず部長で受けてみようか」と言いまして。私も当時は部長だったのと、組織内に20名ほど部長がいましたので、近藤さんにいろいろと受験のステップや、受験をしてどんな考察が得られるかといったことを指南してもらい、1ヶ月くらいの期間を設けて、まず部長の20名でこぢんまりと受けることになりました。
そこで結果がこうだったと、個人的なフィードバックもしてもらうのですが、相対的に見て「あの人とこの人は意外と似ているな」ですとか、「意外と違う、両極端にいるな」といったばらつきが20人の中でも結構ありました。
水谷:深める機会を設けたんですね。
竹村:はい。共有して、いろいろ話し合う、と。20人をタイプ別にプロットしてみました。すると、傾向として左上が少ないですとか、真ん中あたりが多いといったさまざまなことが分かってきたので、これを次に受けてもらうなら課長だというように、ステップを踏んでいって、最終的には約350人の組織全員に受けてもらうまでに至りました。
水谷:まずは組織の上の方々から受けてみようという話があって、ProfileXT®を解釈するためのセッションを近藤さんの方から提供し、得られた結果を元に4分類も実施したということですね。そのやり取りについて、近藤さんから付け加えていただけることはありますか?
近藤:いえ、あまりありませんね。結局、まず本人たち同士は、お互いの結果を見ると、「何々さんは、やっぱり社交性が低いよね」という感じで、極端なところに目がいって勝手に会話が盛り上がるので、提供者側は一歩引いて見守っておけば、あとは自分たちでどんどん気付いてくれますので。
先ほどの4分類というのは、分類するためのアルゴリズムがあるので、アセスメントのデータをもらってアルゴリズムに則って分類結果を出して、「あなたはAグループです」「あなたはCグループです」といった結果を本人に返してあげたということです。
水谷:近藤さんはコンサルの経験が長いわけですよね。ProfileXT®のようなツールがなくても、いろいろディスカッションはできたと思いますが、こうしたツールが入る意味合いを改めて教えていただけますかね。
近藤:「空中戦じゃなくなる」のが、大きいです。何となく、「あなた元気だよね。元気だから営業に向いているよね」と言っても、おそらく向いてはいるんでしょうが、きちんと「社交性がこうで調整力がこうなっているから向いているのではありませんか」とデータで出てくれば、受け止め方も科学的になりますし、判断の基準が変わらないので、誰がやってもその結果はそうだと受け止められます。そういう意味では、やりやすくなります。
水谷:竹村さんもうなずいていました。何か思い浮かんだことがありますか?
竹村:アセスメントを受けたことで、例えば表面的には冷静な方だとしても、定量的な結果としてはエネルギッシュなタイプだったと分かったとします。実は何らかの機会があればエネルギーを発揮してもらえる方向に持っていけますし、冷静なことも今できているとなれば、すごく柔軟性のある人だという捉え方ができます。「冷静で論理的な人」と捉えているだけでは、リーダーシップを取ってもらうことが難しいと思うこともあると思います。
実は、表面化してないだけのことも、たくさんあると思うんです。それは環境や人の組み合わせによって、表面化することもあると思うので、その人の特性を客観的に知っておくことは重要ですね。メンバーのアセスメント結果をマネージャーが見ることで、新しい活躍に気付くきっかけになったかなと思います。
水谷:先日ある企業で、適切配置にもちろん活用できますが、組織力強化にも活きます、と。必ずしも積極的ではない波形の方がいて、マネージャーの方も、その人は積極的なスタイルではないことを理解していましたが、アセスメントの結果も本人に伝えながら話した結果、行動を少し変えることができたという話があります。周りで見ているメンバーが、「もともと必ずしも積極的ではなかった彼女が、努力して変わろうとしている」と受け取っていて、「彼女は最近変わりましたね」とマネージャーに伝えにきたそうです。
竹村:「なんでこの人は、こういう行動を取るのかな」、「どうして、こういうことを言うのかな」といった背景が、ProfileXT®の結果から分かると、「やっぱりそういう人なんだ」と周りが理解できますし、アセスメント結果を共有すると本人が変化しようとしていることにも気付けます。そうした2回の機会に、ProfileXT®を受けてよかったと思えるのではないか、と。
近藤:よい意味で周りに我慢してもらえますよね。僕なんか協調性がない方で、最近は協調性がないことを売りにしているので、「あいつはもうしょうがないよね、好き放題やるんでしょ」といった感じで、周りに許してもらっているつもりでいます。
水谷:自分の特性を笑いに変えられる、という側面もあると思いますね。ありがとうございます。竹村さんの事業部で、どういう変化があったのか、ご説明いただけますか?
竹村:まず、部長20名に受けてもらい、次のタイミングでいきなり350人に受けてもらうのか、課長クラスに受けてもらうのかといったことを決める前に、次の進め方を近藤さんの部門といろいろディスカッションしました。
その時のメンバーは、私だったり、人材・組織に関心のあるような部課長、メンバーも何人か選定して、10人ぐらいにヒアリングをかけたんですね。コンサルの方からインタビューをしていただきました。すると、一つの共通点として、上段に課長がいて下段にメンバー、現場層の方がいる組織体系が見えてきました。
近藤:どっちの層の人も疲れていて、めちゃくちゃ嫌な組織ですよね。
竹村:ですよね。今でいうと、例えば働き方改革や労働時間の問題などたくさんあって、課長は部下に対して長時間労働をさせられませんし、組織としては人材が固定化していて流動性が低いので、長くいる人ほどノウハウを持っています。
日本企業ではよくあることだと思いますが、そうすると、何か問題が起こったときや新しいことを始めるときに、メンバーに仕事を振るよりも課長が自分自身でやった方が早いとなります。
水谷:プレイングマネージャーですね。
竹村:そうです。すると、課長が業務を抱えがちですし、一方で、メンバーからすると課長が忙しそうなので、何かで頼りたくてもなかなか頼れなかったり、労働時間の問題もあいまって「ここはもう、これはお願いします!」と任せたり、どっちにしてもメンバーが育つような状況にはありませんでした。
水谷:竹村さん、これって言っちゃっていいんですか?
竹村:別に綺麗ごとを言うつもりもなく、今も少なからず状況は残っていると思っています。プレイングマネージャーはどの会社にもきっといると思いますし、マネージャーは現場の仕事に責任を持たなければいけません。ただ、自分の仕事の何割かをピープルマネジメントの方にシフトしてあげられると、組織全体としてエンゲージが高まったり、生産性上がったり、事業創発にも繋がる可能性は十分にあると思うので、プレイングマネージャーが必ずしもよいわけではないと思います。
これは会社によって特性があるかもしれませんが、弊社の場合はメンバーがたくさんいるので、ピープルマネジメントをやらなければいけないと思っています。
近藤:ちなみにコンサルティングでいろんな会社に行きますが、プレイングマネージャー問題はどこでもあるというので、日本企業あるあるだと思います。もしかしたら外国の企業はちょっと違うのかもしれませんが、日本のある程度大きな企業だと、おそらく共通の課題なのかなと思います。
水谷:そういった組織課題があってこの取り組みを経て、当然100パーセント解決しきることはなくて、いろんな施策に取り組んでいかなければいけないと思いますが、何か皆さんにお伝えいただけることはありますか?
竹村:いくつもあるうちの1つですが、実体験として、何か新しいことを始めようとすると抵抗勢力や、声をかけてもほぼスルーする人がいっぱいいます。一方で、「なんだかおもしろそうだね」と言ってくれたり、声に出さなくても内心で思っている人もいたりするので、ちょっと違和感のあることでも、例えば「ProfileXT®を1回受けてください」と言ってしまうことは大事ですね。
そうすると、2-6-2の法則でいうところの2割の前向きな人はよいとして、6割の可燃型の人たちも巻き込める可能性があります。現場でパッションを持っている人は、チャンスがあったらとりあえずやってみる。まず、リーダーシップを取ってみる。そして、結果も確認して、また継続する。そういうことを続けることが大事かなと思います。
水谷:竹村さんのようにこうやってみようって思える方とその次の層をどう作っていくか、といったことが1つキーですかね。もしかするとProfileXT®でそうした特性を持っている方も探し出せるかもしれませんね。
「キャリア」という言葉が複数、出てきましたが、このあたりは何か仕掛けられたんですか?
近藤:「キャリアカルテ」のことですね。取り組みの最後の方の段階で、「キャリアカルテ」というものを作りました。本人の資質はProfileXT®である程度分かります。
一方、スキルについては、弊社ではPCDPという認定制度があって、どういうスキルが必要かということが分かっているので、PCDPで診断してスキルを見定めます。もう1つはアンケートで本人のWILL、「あなたは何をやりたいの」という希望を聞いて、その3つを1枚のキャリアカルテにまとめてあげる、と。
「自分はどういうことに向いていて、どこのスキルはある程度あって、こういうことをやりたいと思っている」といったことがまとまっているので、自分の中で振り返ってもらい、キャリアカルテをもとに上司との面談にも臨んでいただくということを、トライアルでやってみました。
これ結構、手はかかるんですが、それなりに評判もよかったですね。今度は社外のお客さんにも、制度が異なるので同じものは作れませんが、同じコンセプトでキャリアカルテを作って、出していこうかと思っています。
データを過信せず、背景を読み解き施策に落とし込む重要性
水谷:私たちの1つの方向性として、新卒一括採用でみんな同じ研修を受けるといった、日本の標準化された人事の時代からはだいぶ変わってきていて、1人1人に合ったおすすめのキャリアを会社から提示していくことが重要ではないか、という話を昨日させてもらいました。それに近い取り組みをNTTデータさんでは行っていると感じました。
近藤さん、人材と組織という点について、熱い思いを持っていらっしゃる臭いがしまして、何かそのあたりの思いも聞きたいと思います。どういう思いでプロジェクトを今やっていらっしゃいますか?
近藤:チームのミッションでいうと、僕らはデジタルタレントチームという部門で働いているチームです。そこでのミッションとしては、「すべての働く人を笑顔に」ということです。
今、働いている人を見ていても、なんだかつまらなそうに働いている人とか、本当はもっと活躍できるのに地味にやっている人も多いのではないかと思っています。それは機会損失でもあるので、うまく人材と機会を組み合わせれば、みんなが笑顔になって幸せになれるのに、そうなってないともったいないので、ミッションを実現したいと思っています。
それは自分たちのチームもそうですし、自分たちのチームだけではなく自分たちが支援している支援先がみんな幸せになれるようにしたいなと思っています。
水谷:花咲じいさんの話もしていました。
近藤:そうですね。「満開の桜並木」というのが、うちのビジョンなんです。1人1人は桜の苗木で、僕らが育くんで、灰をまいて花を咲かせてあげるという。その皆さんが成長して花が咲いて満開の桜並木ができている状態が、僕らの夢です。
水谷:この話を、ProfileXT®を使っている方とのコミュニケーションとして設定したディスカッションの場で、そういう字面でミッションやビジョンが書かれているのは見ていましたが、実際に横で近藤さんから聞いたときに、「近藤さんはこういう思いでお仕事をされているんだ」と私も心が動いて、鮮明に覚えています。
これは、とても大事なことだと思いますが、未来を作り出す取り組みにおいては、パワーが必要で、責任も発生するので避けたいと思われやすい流れがあるかもしれません。
ただ、NTTデータさんにおいては、プロジェクトの取り組みを2022年1月の段階で可視化し、宣言して取り組んできました。(スライドを投影しながら)左側には、処方箋(オファリング)を人事本部と全社に展開に広げると書かれていて、これはまさに人事本部の取り組みが取材を受けるまでになりました。下には、現場事業部レベルで他の事業部にも取り組みを広げています。
当然、皆さんからすると、うまくいかないこともたくさんあったと思いますが、絵にかいた通りに力強く実行されていることは、逆に私たちもエネルギーをもらえるものですし、その原動力について私なりに見ると、近藤さんや近藤さんのチーム、それを支えるメンバーの方々の熱意あふれる考え方なのではないかと捉えています。
ここからは、この先の未来や、今取り組んでいることについて話を進めていきたいと思います。最新の取り組み状況について、近藤さんからご説明いただけますでしょうか?
近藤:これはとある会社の事例ですが、マネージャーになるにあたって、どういう人が向いているのかというのを分析し、コンサルティングした事例になります。
(スライドを投影しながら)そこで作成したもの(イメージ図)になります。横軸がマネージャーとしてふさわしいパフォーマンスモデルとのマッチ度です。右にプロットされる人ほど、ふさわしいということです。縦軸は通常の業績評価、これは複数の業績評価をミックスしたものになりますが、上の方にいる人ほど業績評価が高いということになります。
その人たちをマッピングして分類すると、右斜め上の第1群で、業績も高くてマッチ度も高い層が見えてきます。第2群は、マッチ度は高いけれど業績は不足しているということですね。このように1群、2群、3群、4群と人材を分け、それぞれにどんな施策をしたらよいかという話をしました。
例えば2群だと、素質はマッチしているのに業績がついてこないということなので、もしかしたら育成の問題があるのかもしれませんし、場合によっては業績が出にくい部門にアサインされているケースもあるかもしれません。2群だからどうということはなく、2群はこういった観点でみてはどうですかという話をして、先日、最終報告を終えました。
水谷:クライアントはどんな反応でしたか?
近藤:プロジェクトオーナーの方は、ProfileXT®にも理解が深く、要は、ProfileXT®でできることは多いけれど、データがすべてではなく、どこまでがProfileXT®でできて、どこからは自分たちで考えなければいけないのかという線引きが分かったとおっしゃっていました。
あとは、素質とポジションのマッチ度が低い人がいたら、その人はダメだと判断するのではなく、例えば「社交性が低いからマッチしない」という結果が出ていたら、行動として社交性を高めるトレーニングをすればよいといった話もできます。あるいは、社交性が高い部下と組ませればよいですよね。
出た結果を0か100で判断するのではなく、それを踏まえてどうするかまで考えることをしていけば、すごく使えるなと思っています。
水谷:今、事業部サイドの話をしていただきましたが、近藤さんが話されている話は氷山でいくと上の話で、仮に社交性を抑え気味の方でもスキルや経験を足せば社交性が増すといった考え方がありました。こういう話は、普段事業のことを考えている事業トップの方々にとって、ピンとくるものでしょうか。
竹村:実際に結果も出ているので、説得力はあると思っています。ただ、事業はオンゴーイングで進んでいくものです。目の前に顧客がいたりサービス商品があったりする中に、昇格したいとかスキルアップしたいといった社員ごとの希望がかなり複雑に絡み合っていますよね。
そのときに、組織長が何を優先するかといえば、お客さまとの関係性や今年の売り上げ・利益といった、優先順位の高いものになります。ですから、組織の作り方や社員の成長に、いつでも注力できるとは限らないと思います。
短期と中長期のバランスをどうしますかという議論において、短期のKPIはよく設定されていると思いますが、中長期をどれだけ見られるかによって、適所適材もできると思います。例えばこうしたProfileXT®をやってみようと思う人には、おそらく中長期の目線があるのだと思います。
水谷:そこはポイントですよね。そのときどの視点で組織長が組織を見ているか。視聴者の皆さんは、どちらかというと少し期間を取ってしっかり成果を出していこうと考えていると思いますし、そういう組織を持っている方々がいらっしゃると思います。竹村さん自身が中長期の視点に切り替わったきっかけはありましたか?
竹村:今の組織に来たのが5年前なのですが、それまでのキャリアでこの組織のビジネスには携わってこなかったので、専門性がない状態でいきなりマネージャーになりました。
そうなったときに、元から組織にいる人の方がノウハウもスキルもあるので、いかに彼らに任せて、予定通り計画通りに物事を進めるかに注力せざるを得ませんでした。私が1から開発をやるか、プログラミングをやるかというと、そんなことはやっていられないので。
そうすると、メンバーとのコミュニケーションや信頼関係を大事にしなければいけないということで、コミュニケーションを取ろうとした矢先にコロナ禍に入りました。リモートワークを強制的にさせられる状況になったので、組織を改善しなければいけないという考えに繋がったのです。
ただ、リモートでも信頼関係を構築できることも分かりましたし、自分の組織のエンゲージメントもよい状態になっているので、これを継続していきたいと思っていますし、私がやっている行動を部長陣にアピールしていきたいです。「誰でもできるんだ、やればいいじゃん」ということを伝え「どうしてやらないの」という空気に持っていけるとよいなということですね。
水谷:これからやっていこうと考えていることをいくつか、ご紹介いただけたらと思います。
近藤:(スライドを投影しながら)ここでいう自己認識と相互理解、ジョブマッチングといった使い方は、一般的なProfileXT®の使い方で、どの企業でも実施していると思います。
私たちが最近やろうとしているのは、人と人のマッチングでの活用です。メンターはどういう人と組ませたらよいか、といったことに活用していたり、あとはちょっと調子に乗って婚活パーティーも開いてみたりしています。婚活パーティーは全然うまくいきませんでした。何を言われたかというと、「結婚にはProfileXT®の指標がすべてではない」ということですね。
ほかには、リスキリングという言葉が最近よく聞かれますが、リスキルしやすいジョブとリスキルしづらいジョブがあって、ジョブにはそれぞれ特徴があるのでスキルの似ているジョブをリスキルしていかないと、結局、挫折してしまいます。そうしたリスキルのロードマップを作成しています。
あとはですね、エンゲージメント向上の文脈で、これはProfileXT®から離れてはきますが、プロモーションビデオを担当チームが一緒に作ることでMVVを作り上げるといった取り組みを始めました。今度、竹村さんの部署でもやっていただくので、これがムーブメントになったらよいなと思っています。
水谷:近藤さんのチームのPVも、かなりよい感じに仕上がっているということなので。
近藤:YouTubeで検索するとNTTデータの公式アカウントで出てきます。「デジタレノヒトの人」と検索していただければと思います。
https://youtu.be/df__UyqO39Q?feature=shared
水谷:では、時間になりましたので、最後に一言ずついただいてセッションを締めくくりたいと思います。
竹村:改めて自分のやっていることを振り返ってみると、人が動かして動かし始めていくことが重要なんだということに気付きました。皆さんの会社でもぜひ私たちのような人を見つけてもらって、ドライバーになってもらえるとよいのではないかと思います。
近藤:最後は予定調和になってしまったので、少し反省して、次に来るときは、もっと成長した姿を見せられると思いますので、引き続きよろしくお願いします。
水谷:今日は貴重なお話をいただき、ありがとうございました。
セッション動画全編はこちら
動画申し込みURL:https://survey.hrdgroup.jp/zs/l1Cl17
2024年01月26日