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人的資本経営を推進するために必要な「人事DX」人材・組織データを活用した「営業組織力向上」と「顧客満足度向上」とは

人的資本経営を推進するために必要な「人事DX」
人材・組織データを活用した「営業組織力向上」と「顧客満足度向上」とは

東海東京証券株式会社 執行役員 営業支援本部長
鈴木 基由 氏

東海東京アカデミー株式会社 代表取締役社長
真殿 修治 氏

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登壇者のご紹介

ゲストスピーカー
東海東京証券株式会社 執行役員 営業支援本部長
鈴木 基由 氏
Suzuki Motoyuki

2001年、東海東京証券(株)へ入社。リテール営業店勤務を経て、中部・関東の3支店の支店長として組織マネージメント業務に従事。
2021年に営業統括部長に就任し、営業戦略の立案や営業DXの推進を担当。2023年より現職。

ゲストスピーカー
東海東京アカデミー株式会社 代表取締役社長
真殿 修治 氏
Madono Shuji

野村証券、トヨタFS証券などを経て、東海東京アカデミー入社後、現職に至る。
日本証券アナリスト協会検定会員、CFP、社会保険労務士

モデレーター
HRD株式会社 ディレクター パフォーマンスコンサルタント
水谷 壽芳
Mizutani Hisayoshi

HRテクノロジー活用による経営強化・改善のコンサルティングを提供。製造業・IT業界・製薬企業を中心として、組織・人事コンサルティングに関する約10年の経験を有している。日本国内における新たな人材アセスメント・ツールの普及を志向して、70社を超える戦略的ビジネスパートナーとの新規事業の立ち上げに関わってきた。ビジネスパートナーの事業支援・コンサルティングスキル指導に定評があり、ProfileXTなどの人材アセスメント認定セミナーの講師としても、延べ600名以上の認定資格者を養成してきた。

セッション概要:https://www.hrd-inc.co.jp/hrd-next/2024/#modal-session1-day1

このセッションでは、人事データの先進的な活用法を探求します。営業組織力向上とハイパフォーマー育成による顧客満足度向上に焦点をあてて、一般的に難しいとされる人事データ活用にいち早く取り組んでいらっしゃる、東海東京証券株式会社。今回は、その取り組みの中心人物であるお二人のゲストスピーカーをお招きしています。拡張分析の力で顧客満足度を高めるセールス行動を特定し、個別化された人材育成で営業組織力を向上させた取組について、具体的なエピソードを元にお話いただきます。人事DXの波に乗り、営業力と顧客満足度の同時向上を目指す皆さんへ、実体験に基づく知見を提供します。

行動データだけでは捉えきれないハイパフォーマーの素質を可視化するプロジェクトに挑戦

水谷:本セッションは、人的資本経営を推進するために必要な「人事DX」というテーマで、2名のゲストスピーカーをお招きしてお届けします。

お招きしておりますのは、東海東京証券の営業支援本部本部長(現:カスタマー支援本部本部長)である執行役員の鈴木基由さん。そして、東海東京アカデミーの代表取締役社長(現:東海東京インテリジェンス・ラボ 取締役副社長)である真殿修治さんです。

お二人には、人的資本経営を推進するために必要な人事DX、および人材データや組織データを活用した営業組織力向上、その取り組みがお客様の満足度にどう貢献していくのかを、じっくり伺います。それでは、それぞれ自己紹介をお願いします。

鈴木:東海東京証券株式会社、営業支援本部の鈴木と申します。営業支援本部については、営業企画や営業部門のサポートを中心に執り行っています。私自身は営業の経験が20年ほどあることから、その経験を生かして現在は営業社員のサポートをしているという立場になります。本日はよろしくお願いいたします。

東海東京証券株式会社 執行役員 営業支援本部長 鈴木 基由 氏
東海東京証券株式会社 執行役員 営業支援本部長 鈴木 基由 氏

水谷:では真殿さんお願いします。

真殿:東海東京アカデミーの真殿と申します。東海東京アカデミーは、東海東京証券グループの人材開発を担当している会社です。さまざまな研修を行っていますが、今回の取り組みでは一部の研修を社内で内製化したということで、その観点からお話できればと思います。本日はよろしくお願いします。

東海東京アカデミー株式会社 代表取締役社長 真殿 修治 氏
東海東京アカデミー株式会社 代表取締役社長 真殿 修治 氏

水谷: 本セッションは、3つのパートに分けてお話しします。1つ目のパートでは、東海東京証券の「営業生産性向上プロジェクト(以下、本プロジェクト)」の背景を鈴木さんからお伝えいただきます。2つ目のパートでは、人材のアセスメントデータを活用した人材の資質分析についても伺いながら、一連の取り組みをどのように内製化し人材育成につなげていったのかをお聞きします。そして、最後のパートでは、3人でディスカッションを行います。

それでは鈴木さん、最初に、御社の事業の方向性についてお話しください。

鈴木:当社では2022年4月から「“Beyond Our Limits” 〜異次元への挑戦」というテーマを掲げ、中期経営計画をスタートしました。目指す姿としては、「『誇り』と『憧れ』を感じる企業グループ」と言っています。また行動指針には、「“Social Value & Justice” comes first」を銘し、「より良い社会に」、「凡事徹底」、「わくわく」の3つの軸を掲げています。2027年に目指す地点は、「異次元の世界 New World」に置いております。

資料 当社が目指す姿

今中期経営計画では、戦略の基本方針として「金融力の強化」「異次元に向けた重点施策」の2軸で取り組んでいます。とくに弊社の場合、足元で金融力の強化に取り組むことで、収益力向上や安定収益構造の確立、生産性向上に注力していきます。

水谷:私も御社の方針を何度か伺った中で、特徴的なのが「異次元」という文言だと思います。鈴木さんのチームや真殿さんのチームと一緒に仕事していても、まさに「異次元」を体現されていることを感じます。真殿さんは、この事業の方向性をどのように捉えていらっしゃいますか?

真殿:異次元の世界を実現する人材を育成することが弊社の役割になってきますが、それはそう簡単な話じゃないと思いますね。ですから、試行錯誤しながらやっている、というのが現状かなと思っています。

ただ一つ言えることは、思いつきや偶然で実現できることは100パーセントない、ということです。最新の理論や手法を取り入れ、実際にやってみて、検証して、改善していくようなプロセスがどうしても必要になります。そうして少しずつよくしていきながら、人材育成の枠組みができていけばと思っています。

水谷:本プロジェクトについて、鈴木さんからご説明をお願いできればと思います。

鈴木:本プロジェクトでは、どのような社員の資質や行動がお客様の満足度に繋がり、業績の押し上げに繋がるのかを分析しました。人材データの拡張分析ツール「BrainPad VizTact(ブレインパッド ビズタクト)」を用いて、ハイパフォーマー人材に共通する資質や行動の特性抽出に主眼を置き、取り組みました。

分析に使用する人材データについては、HRD社から提案をもらい、まずは従業員の内生面のアセスメントと、行動特性のデータ、そして各営業員の人事評価の3つを足しあわせて分析することで、より科学的、客観的な人材分析に踏み切りました。

資料 ”営業生産性向上プロジェクト”とは?

水谷:業績に繋がる行動と資質を組み合わせて分析したということですが、この取り組みをするタイミングだったのでしょうか? 

鈴木:過去には行動データを活用し、トップセールス人材の行動データを分析することには何度かチャレンジしたことがあります。例えば、訪問件数や架電の件数、時間の使い方ということについては何度か分析したことがありますが、やはりその人の資質や内生面まで分析が必要だということと、当時は営業員が腹落ちできるレベルまで分析結果を活用できなかったことから、本当に手応えがある施策だったのかという点で疑問が残っていました。

水谷:真殿さんも本プロジェクトに関わる中で、開始当初はどんなふうに映っていましたか?

真殿:突然プロジェクトの話が弊社に降ってきたので、最初は「何を言ってるんだ」という印象でしたね。我々も年間の計画を立て、人材をアサインしていますので、突然やってきて、見たことも聞いたこともない研修を事前にやってくれと言われたので、好印象とはいえませんでした。

ただ、話を聞いてみると非常に意義があるし、やる意味もよくわかる。となると、どうやってやるかということですが、手を空けられるのが私ともう1人の役員だけでしたので、「じゃあ、2人で腹をくくるか」という話になり、全12回の研修を実施することにしました。

60歳を超えた2人でしたが、短期間でプロジェクトを立ち上げる経験も大切だなと思いましたので。その後、もう2人、若手を参加させて経験値を積んでもらうことにしました。

ですから入口は印象がものすごく悪かったのですが、しょうがないので頑張りましょうと意識が変わったということですね(笑)。

水谷:大変、印象的なスタートでした。鈴木さん、本プロジェクトで具体的にどんなことを分析したかについて、お話しください。

鈴木:分析のテーマは冒頭で話したとおり、営業担当者のどのような行動がお客様の満足度に繋がり、業績を押し上げているのか、ということです。また、ハイパフォーマーのグループはほかのパフォーマーと比べ、資質や行動面にどんな違いがあるのかを調べました。

また、当社では顧客層に応じて営業部門をセグメントしています。例えば、個人営業の部門も、富裕層・成熟層・資産形成層の各顧客セグメントに分かれ、属性の異なるお客様に向けて営業を行っていますので、それぞれのセグメントに求められる人材像も抽出しています。

また、個々人の特性を踏まえた、上司の関わり方も検討していきました。さらに、退職者の退職要因と防止のアクション、イノベーションを推進する人材の特性についても分析のテーマとしました。

水谷:この中で、鈴木さんが印象的だと感じた切り口や特徴、ご感想はありますか?

鈴木:今回ジョブマッチということで、適正な人員を割り出すにあたり、リテール部門では能動的な営業が求められていることが印象的でした。ウェルスマネジメント部門では傾聴が、マルチチャネル部門では行動指針に「凡事徹底」とあったように、オペレーションの正確性が適性項目になりました。

水谷:当時、それぞれの部門の本部長にもお話をして、リテール・ウェルス・マルチチャネルの3部門で求める人材の特徴が異なるということを理解いただく上で、何がどう異なるのかを具体的に出していけたことは、私たちとしても価値がある取り組みだったと理解しています。

資料 活用データの詳細

ハイパフォーマー分析を進める過程で、個人の特性に合わせた教育を行う意識が醸成される

水谷:その中で今回、トップパフォーマー分析を実施しています。こちらについても、ご説明いただけますか?

鈴木:(4象限に分けたうち右上の)トップパフォーマーのグループについては、ジョブマッチの程度も高く、業績もしっかり上げられている上位20パーセントです。ここは文句なしのグループになるかと思いますけれども、その右下のグループは、ジョブマッチの程度は高いのですが、なかなか成果に繋がらないといったグループですね。

そして、左下のチャレンジグループは、仕事に対する資質も今ひとつで、なかなか成果にも結びつかないグループです。大きくこの3つのグループに分けて分析を行いました。

とくに、ハイポテンシャルグループの資質がある人間をどうハイパフォーマーにできるかということと、チャレンジグループについては行動に置き換えてリードできるかということが課題だと思っています。そのために必要な人材データを、非常に明確にしてもらいました。

資料 トップパフォーマー分析の概要

水谷:さらに、鈴木さんからご紹介いただいた3つのグループの右上の属性について、具体的な特徴が抽出できました。いくつか資質がある中で、一番特徴的だったのは、人材アセスメントツール「ProfileXT®」でいう「主張性」です。スコアが10寄りの(主張性が強い)方が適性があるということが分かりました。その資質を支える構造として、今回大きく2つの要素が出ました。

事業開発精神あふれる態度、そして効果的な目標設定。こういったことが行動として発揮されていると、業績やお客様の満足度といったものに繋がるということが示されました。

資料 トップパフォーマーの特徴

鈴木さん、当時この話を聞いたときに思ったことや、現場と紐づけられることはありましたか?

鈴木:主張性や開発精神あふれる態度については何となく納得感が高かったんですが、効果的な目標設定というのは洗い出していただいて本当に課題だと強く思いました。とくに私もセールス時代はそう思ってましたし。営業課長や支店長を歴任したときも、そういったところを疑問に感じたり、モチベーションに直結していた部分なので、この課題に今後、真剣に取り組んでいきたいと強く思いました。

水谷:「やっぱりな」という印象だったということでしょうか。

鈴木:実際に、そうですね。難しいことだとは思いますが、適切な目標設定をしてあげることで、人材がトップパフォーマーに近づいていくということを強く感じました。

資料 分析テーマ(抜粋)

水谷:真殿さんには本プロジェクトの節目で、報告会にご出席いただきました。報告会には当然、幹部の方がお集まりいただくので、結構緊張感がありますが、私たちが準備していましたら真殿さんがお見えになって、「水谷さん、HRDさんは、家族のように思っているから、よろしくな」と言っていただきました。すごく嬉しかった記憶がありますが、覚えていますか?

真殿:ええ、覚えています。短い期間にやりあげた仲間感ってありますよね。その場に社長も来られましたので、水谷さんのポイントも少し上がるかなと思って、配慮しました。

水谷:御社の皆さんは私たちをベンダーとして扱うような素振りを一切見せずに、ありがたく感じました。そのあたりは御社の特徴だと思っていますが、鈴木さんは、本プロジェクトで仲間感を意識したことはありますか?

鈴木:今回のアセスメントについて水谷さんが、「ピッチャーやキャッチャー、セカンドを決めたりすることだ」と、野球の例え話をしてくれました。とても分かりやすかったですし、個々人の特性に合わせて人材をポジショニングしていきたいという話が非常に刺さりました。そこから、もう心を開いて。

対談風景

水谷:では、ここから人材育成にフォーカスし、本プロジェクトの中身を皆さんにお伝えできればと思っています。真殿さんからこの分析結果をもとに、営業社員向けにワークショップをしていただいたので、お話しいただけますか。

真殿:ワークショップそのものは、HRD社の枠組みを使っています。資料を直せなかったということと、英語を直訳したような言葉が多く、やや分かりづらかった印象です。そこからどうやってやったかというと、HRD社の認定セミナーを受け、リハーサルに参加しました。

リハーサルの内容を文字起こしし、社内でも練習して、とりあえず体に覚えこませるようにしました。そうしないとなかなか内製化にたどり着かないので。とりあえず、水谷さんと同じことが喋れるようにはなりました。その上で、東海東京の社員だったら、どこに躓くのかを考えたわけですね。

例えば特性でいえば、独立性と協調性と組織従順性という言葉の違いが結構わかりにくいんです。

独立性は上司との関係のこと、つまり上下の関係性ですね。協調性は、横の関係性です。組織従順性はルールへの適応性ということだと思います。そのように類似する文言が出てきたときは必ず比較して、定義を説明するような形にしました。

同じように、例えば「判断の客観性」と「決断性」という文言があります。それぞれ、判断スピードと判断の根拠を指していますが、こういうことも2時間ぐらいの研修で聞いただけでは落ちてしまうので、そうならないように工夫したところです。

ただ、そういったところを乗り越えれば、中身は非常にいいと思います。社員にも響くと思いました。

水谷:東海東京アカデミーの皆さんと1本目の研修を本社にデリバリーした後、セミナールームでみんなで振り返りをして、改善してよりよくなったということがありました。

真殿:やはり、社員に中身を理解してもらうことが大切です。理解すると、皆さん価値を認めてくれるのは間違いないと思います。

水谷:先ほど、このプロジェクトが始まる段階で鈴木さんと私どもで本プロジェクトのお願いにあがったときに、真殿さんはスケジュール調整が大変だったということでした。それでもやろうと思った背景は何ですか?

真殿:冒頭にお話したことと関係しますが、新しいものを取り入れていくしかないと思っていたからです。中身を見ていくと、すごく可能性があると思いました。余裕があればぜひやるべきだ、でも余裕がないからどうしようという話になっただけで、これからはもうちょっと計画的にやってもらえるとありがたいです(笑)。

水谷:ありがとうございます。本セッションの視聴者には、アセスメントの認定資格をお持ちの方も多くいます。真殿さんにもProfileXT®の認定セミナーに参加いただいた中で、資格者の方々に経験を通じてお話しできることはありますか?

真殿:繰り返しなるかもしれませんが、文言が少し難しいので、例えば人事の詳しい方だったらこれで十分ですが、会社ごとに特性が異なり伝わりやすい言葉も異なりますから、そこに文言を合わせるだけでも理解度はかなり上がるんじゃないかなと思います。

水谷:資格者の方々で、内製でやっていこうということを考えている方も結構多いと思います。東海東京アカデミーさんの組織において、本プロジェクトを通じて変化はありましたか?

真殿:実際に、たしかにこれは意味があるんだなと思うことがあって、2人アサインしたという話なんですが、これはたまたまエネルギーがですね、右寄りと左寄りで分かれていたんです。そうすると、いろんな打ち合わせでも、ハイスコアの方はたくさん質問してきて、ロースコアの方は質問が少なくてちょっと心配になりました。

ですが、最終的なアウトプットはどちらかというと、ロースコアの人の方がよかったんですね。つまり、働くスタイルが違うだけだということで、当初心配したときに余計なことを言わなくてよかったと思いました。 あとは特性に応じてマネージャーが部下の見方を変えられるようになれば、人の生かし方も大きく変わる可能性はあると思いますね。

資料 営業向けワークショップ

資格講座を受講し体系を習得、研修・ワークショップを内製化

水谷:ありがとうございます。鈴木さん、今、真殿さんの話を聞いて、本プロジェクトを通じて、例えば現場において反響などはありますか。

鈴木:とくに上司の部下への接し方が変わるということが大きいと思っていまして、真殿社長がお話されましたとおり、「エネルギー」の項目を見ると、コツコツ積み上げていくのが得意なタイプのセールスもいますし、逆にスピードを上げてガーッといくのが得意なセールスもいますので、個々人の特性をよく見極めて指導をしていくべきだと思っております。

無理なスピードでリードしてもストレスがかかりすぎると思いますので、営業員ごとに指導方法を変えるべきなんだろう、ということは本当に強く思いました。

水谷:鈴木さんとのお話の中で、私どもが印象的だったのが、ProfileXT®と、上司部下の関係性を見る「Profiles Managerial Fit™」というサービスがありますが、そのトライアルで鈴木さんともう1人のデータを出したときの反応が、私たちにとっては素晴らしいものでした。あの反応の意味するところは何ですか?

鈴木:あれは、まさにというスコアが出てきて、ピッタリすぎて。自分でも思い当たる節がありすぎて。ここまで内生面がデータ化できる、数値化できるんだっていうことには驚きましたし、私もそうですが部下のメンバーも「データが自分の特性と合っている」と言っていたので。上司にも聞いたところ、「これは合っているな」という話になったので、これはすごいな、と思いました。

水谷:可視化されたデータをベースに、上司の方と1時間ぐらい電話でお話ししたと聞きました。鈴木さん、どうですかね。今プロジェクトとして進んできていて、これからまたいろんなことにもやっていこうということですけど、今改めてこのプロジェクトの意味合いや、関わる中で何かお話いただけることはありますか。

鈴木:ここまで本プロジェクトをリードして来ていただき、内製化にも取り組んでおりますので、ここからは実際の人員配置ですとか、部下の特性をよく理解した上での上司の関わり方ですとか、こういったところにデータをもっと活用したいです。

ビズタクトも導入し、弊社にもDXチームがありますので、さまざまなツールやデータを組み合わせて、いろんな気づきが得られるんじゃないかと期待しております。

今回ですね、上司・部下の関係性においてデータドリブンなトライアルを行っており、当事者の感想を聞くと本当に涙が出るぐらいです。例えば、昔関わった部下が今、課長職になっているのですが、自分が意識していたことに気づいてくれていたことが分かって私も嬉しく思いました。そういった好影響も社内に広げていけるようにしていきたいと思っています。

水谷:涙するくらい熱いものを感じたということですが、具体的に伺ってもよろしいですか?

鈴木:我々の業界は、どうしても「何でできないんだ」と詰め寄るようなパワーマネジメントが多かった業界なので、そうした接し方とか教え方がデータに基づいた教育法に変わっていく期待があります。「この部下はここが苦手なんだ」と分かれば、苦手な部分は上司がリードするような行動を取りはじめたり、エネルギーの量など自分と部下に違いがあることが分かってリードの仕方を変えたりといった、気づきを得たとコメントをもらったことは本当に素晴らしいことですし、そういう社員がどんどん増えることは会社にとって力になると思っています。

水谷:今のファーストフェーズとしては、営業の社員に届けていますが、上司の方にもこの内容をお伝えする機会がありました。上司の方にも体験いただきたいことがあって、「山のワーク」というものをやらせていただいたんですね。

ProfileXT®のスコアに応じて、参加者は自身のスコアを記憶し、ナンバリングがしてあるんですけれども、実際にスコア順に並んでもらうというものです。解説をして、相互理解を深めていくような体験型のワークだったんですね。

このとき、上司の方がほぼ決断性が右寄りに固まりました。決断性が右寄りということは、物事を決めていくときにタイムリーに決めたいということです。少しリスクを取っていく、必要な物事があっても調べることは避けていくような集団であるという解説になります。 並びを見て、上司の方々は笑ってらっしゃいましたね。「俺たち、ちょっとせっかちだったかもしれない」と。一番左に立っていた方(決断性のスコアが低い方)は、「あらゆる選択肢を持っていきたい」と話していたので、「(決断時に)ちょっと慎重にならければいけないな」といった声が上司の皆さんからありました。

資料 山のワークの例

真殿さん、こういう体験ワークには新しい要素も多分にあるかなと思うんですけれども、いかがでしょうか?

真殿:山のワークを実施したのは、まだコロナ禍の時期でしたかね。たしかに、集合してこうやった方が、体に残るかもしれませんね。

水谷:真殿さんは、研修やワークショップを普段から企画・実施していますが、コロナ禍の前後で研修そのものや周りの変化はありましたか?

真殿:それこそ人的資本経営がトピックになり、外部環境も変わってきて、社員の考え方も大きく変わってきたかなと思います。コロナ禍で集合研修ができなくなったっていうこともあるんですけれども、オンラインの研修がうまく機能するようになってきて、反転学習みたいな議論を取り入れて理論化していくと、検証ができるようになってくると、「どうもオンラインで学んで、集合研修ではアウトプットをしてもらうのがもっとも効果的だ」ということが分かってきました。研修成果にも表れてきています。

ですから、こういう風にサイクルを進めていくのがやはり必要だろう、と。新しい潮流もいっぱいあって、キャリアデザインを考えなきゃいけないような時代の流れもあって、集合研修で一律のことを教えることは、だんだん限られてくるんですよね。

それこそProfileXT®上の特性が異なる人に、同じことを教えていいのかということです。例えば、判断の客観性が非常に高い人に、もう1回ロジカルシンキングをやるべきなのか。逆の場合は、コストもかかりますし、それほど意味がありません。そうすると、オンラインも使いこなしてもらいながら、自律的にものを考えるトレーニングも受けてもらう必要があります。

ですから、できればこういったアセスメントスコアを見て、1人1人が自分のキャリアデザインにもとづいて何を学んでいけばいいのかを考え、受講できるところまでいけるとよいと思っています。

水谷:プロジェクトの最中にも、パーソナライズの重要性について何度か真殿さんとやり取りさせていただきました。今回、真殿さんたちにやっていただいたワークショップも結構反響があったと。

真殿:そうですね、受けた人は非常に納得感を得られたようです。同時に、半年ぐらい経ってから、本当に現場で運用をしているのか確認の意味もあって、自由参加型の研修を行いました。普段の倍ぐらいの参加者がいたことから、意識変容しなければいけないという意識がある程度定着したことを確認できました。

研修直後の検証だけではあまり意味がなく、少し経ってからもう1回効果や変化を確認し、必要に応じてもう1回学んでもらうといったループを回していかなければいけないと再認識し、我々の役割として続けていこうと思いました。

水谷:大切なお話ですね。キャリアのところについても少し見解をいただいていたかなと。

真殿:キャリア開発のところでも、適性を踏まえて人事異動だとか適性的手段を行いますよね。その後のこと、将来どうだっていうのは、もう一段考える必要があり、それが会社側の考えるキャリアと、個人がキャリアデザインとして考えるキャリアの両方を考えなければいけないと思っています。

言うのは簡単なんですが、どうやってやるのかが非常に難しい。ただ、そのヒントは少し本プロジェクトで得られたかなと思っています。

水谷:人材育成やキャリア形成を個人に合わせて考えていく必要があるというお話がありました。鈴木さん、これから御社の事業としてもお客様に応じて営業を変えていくという話を伺いました。詳しくお聞きできますか。

鈴木:我々金融機関も、時代の流れとともに大きく変わってまいりまして、お客様1人1人にパーソナライズされた提案、例えばライフプランであったり、ゴールベースだったりに対して、我々としては適切な提案をして伴走するスタイルに変わりつつあるところです。

これは当然お客様に限りではなく、社員に関しても1人1人にパーソナライズされた育成をしていけるような会社でないと今後はいけないということを本当に強く感じています。そのきっかけとして、やはり社員の内生面やキャリアも含めて、うまくリードしてあげられるような施策を打てたらと思っています。

水谷:証券会社さんとして、お客様それぞれに個別化された最適な提案は、当然大事なことであると同時に、社員の皆さんにもパーソナライズされた環境を届けていくことを私たちもこれから本当に一緒に考え、追いかけていきたいなと思います。真殿さんの東海東京アカデミーとも連携をしながら、これから次のフェーズに向かっていければと思います。

鈴木・真殿:ありがとうございました。

対談風景

セッション動画全編はこちら
動画申し込みURL:https://survey.hrdgroup.jp/zs/yQClqp

2024年01月25日

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